労災保険の障害等級(1級)

労災保険の障害等級(1級)

労災の1級等級とは?

労働能力喪失率100%の後遺症が残るもの

労働者災害補償保険法施行規則の表に1級に該当する項目が詳しく定められており、いずれかの要件を満たす必要があります。いずれの要件も労働能力喪失率100%の後遺症が残る場合です。下記表を詳しく見ていきましょう。

労災保険の障害等級(1級)

障害等級1級給付内容身体障害
1当該障害の存する期間
一年につき給付基礎日額の三一三日分
両眼が失明したもの
2そしゃく及び言語の機能を廃したもの
3神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
5削除
6両上肢をひじ関節以上で失ったもの
7両上肢の用を全廃したもの
8両下肢をひざ関節以上で失ったもの
9両下肢の用を全廃したもの

目の障害に関して

1.両眼が失明したもの

両眼が失明したもの

眼球亡失や、ようやく明暗を弁じ得るもの(光覚弁)も含みます。

「失明」とは

「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの、明暗を弁別できないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)または手動弁が含まれます。

「光覚弁」とは

「光覚弁」とは、暗室にて被験者の眼前で照明を点滅させ、明暗が弁別できる視力をいいます。

「手動弁」とは

「手動弁」とは、検査者の手掌を被験者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいいます。

「指数弁」とは

「指数弁」とは、検査者の指の数を答えさせ、それを正答できる最長距離により視力を表わすもので「1m/指数弁」(視力0.02に相当)、「50cm/指数弁」(視力0.01に相当)等と表記します。

口の障害に関して

2.そしやく(咀嚼)及び言語の機能を廃したもの

そしやく(咀嚼)及び言語の機能を廃したもの

咀嚼機能の障害は、上下咬合(かみあわせ)および配列状態ならびに下顎の開閉運動等により総合的に判断します。

「咀嚼機能を廃したもの」とは、流動食以外は摂取できないものをいいます。

「言語の機能を廃したもの」とは、4種の子音のうち3種以上の発音不能のものをいいます。

神経系の障害に関して

3.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

「生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常時介護を要するもの」であるとき、1級と認められ、器質性の障害と脊髄の損傷による障害が問題となります。

脳の器質性障害については、「高次脳機能障害」(器質性精神障害)と「身体性機能障害」(神経系統の障害)に区分した上で、「高次脳機能障害」の程度、「身体性機能障害」の程度及び介護の要否・程度を踏まえて総合的に判断します。

高次脳機能障害とは認知、行為(の計画と正しい手順での遂行)、記憶、思考、判断、言語、注意の持続などが障害された状態であるとされており、全般的な障害として意識障害や痴ほうも含むとされています。

(1)高次脳機能障害

生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの

高次脳機能障害のため1級と認められるのは、「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」である場合です。具体的には以下のような場合です。

  • 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
  • 高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの
(2)身体性機能障害

生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの

身体性機能障害のため1級と認められるのは、「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」である場合です。具体的には以下のような場合です。

  • 高度の四肢麻痺が認められるもの
  • 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
  • 高度の片麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
(3)せき髄障害

脊髄症状のため、生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの

脊髄の損傷による障害については、「脊髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」場合に1級と認められます。具体的には以下のような場合です。

  • 高度の四肢麻痺が認められるもの
  • 高度の対麻痺が認められるもの
  • 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
  • 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの

臓器系の障害に関して

4.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

胸腹部臓器の後遺障害には、①呼吸器の障害、②循環器の障害、③腹部臓器の障害、④泌尿器の障害、⑤生殖器の障害があります。1級の場合、呼吸器の障害が問題となります。

呼吸器の後遺障害

判定方法は①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定、②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による判定、③運動負荷試験の結果による判定があります。
原則として①に判定された等級に認定します。ただし、その等級が②または③により判定された等級より低い場合には、②または③により判定された等級により認定します。

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による障害等級の判定
以下の場合で、かつ、「常時介護が必要な場合」のとき、1級と認められます。

  • 動脈血酸素分圧が50Torr以下で動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torrのもの)
  • 動脈血酸素分圧が50Torr超~60Torrで動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外

②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による障害等級の判定
スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35%以下又は肺活量が40%以下の場合で、呼吸困難の程度が高度(呼吸困難のため、連続して概ね100m以上歩けないもの)の場合で、かつ、「常時介護が必要な場合」のとき、1級と認められます。

腕の障害に関して

6.両上肢をひじ関節以上で失ったもの

両上肢をひじ関節以上で失ったもの

「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • 肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの
  • 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
  • ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

7.両上肢の用を全廃したもの

両上肢の用を全廃したもの

上肢の用を廃したもの」とは、3大関節(肩関節、ひじ関節及び手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものをいいます。

これには上腕神経叢の完全麻痺も含まれ、腕神経叢(わんしんけいそう)とは、上肢の知覚・運動を支配している5本の神経が交わっている部分を指します。

脚の障害に関して

8.両下肢をひざ関節以上で失ったもの

両下肢をひざ関節以上で失ったもの

下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • 股関節において寛骨と大腿骨を離断したもの
  • 股関節とひざ関節との間において切断したもの
  • ひざ関節において、大腿骨と脛骨及び腓骨とを離断したもの

9.両下肢の用を全廃したもの

両下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(股関節、ひざ関節及び足関節)のすべてが強直したものをいいます。なお、3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直したものもこれに含まれます。

1級に該当すると、いくらもらえる?

給付基礎日額の313日分が、障害が残る限り毎年継続して支払われます。

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、事故が発生した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額のことです。

試算例

賃金・月給20万円(賃金締切日が毎月末日、労働災害が10月に発生した場合)

→給付基礎日額は、20万円×3か月÷92日(7月:31日、8月:31日、9月:30日)≒6,521円73銭となります。
なお、給付基礎日額に1円未満の端数がある場合は、これを1円に切り上げるので、今回の額は6,522円になります。

労働災害により1級の後遺障害が残ったと認定された場合、障害保障給付金として
6,522円×223日=2,041,386円が障害が残る限り毎年継続して支払われることになります。


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