労災保険の障害等級(11級)

労災保険の障害等級(11級)

労災の11級等級とは?

労働能力喪失率20%の後遺症が残るもの

労働者災害補償保険法施行規則の表に11級に該当する項目が詳しく定められており、いずれかの要件を満たす必要があります。いずれの要件も労働能力喪失率20%の後遺症が残る場合です。

労災保険の障害等級(11級)

障害等級11級給付内容身体障害
1同223日分
※一回のみ
両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
3の2十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
3の3両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
4一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
5せき柱に変形を残すもの
6一手の示指、中指又は環指を失ったもの
7削除
8一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
9胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

目の障害に関して

1.両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの

調節機能障害
(1)調節機能障害

調節機能とは眼の屈折力を変化させる機能、すなわち、ピントを合わせる機能です。

①「眼球に著しい調節機能障害を残すもの」とは、調節力が通常の場合の2分の1以下に減じたものをいいます。

②調節力が2分の1以下に減じているか否かは、受傷した眼が1眼のみの場合は、受傷していない眼の調節力との比較により判断します。なお、受傷していない眼の調節力が1.5D以下の場合には、障害補償の対象になりません。

③両眼が受傷した場合及び受傷した眼が1眼のみでも受傷していない眼の調節力に異常が認められる場合には、年齢別の調節力を示す下の表の調節力値との比較により判断します。

年齢1520253035404550556065
調整力9.797.66.35.34.43.12.21.51.351.3

※55歳以上であるときは、調整力が1.5D以下となることから、障害補償の対象になりません。

(2)運動障害

「眼球に著しい運動障害を残すもの」とは、眼球の注視野の広さが2分の1以下に減じたものをいいます。

注視野とは、頭部を固定し、眼球を運動させて直視することのできる範囲をいいます。注視野の広さは、相当の個人差がありますが、平均では単眼視では各方面50度、両眼視では各方面45度です。

2.両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

「まぶたに著しい運動障害を残すもの」とは、開瞼時(普通にまぶたを開瞼した場合)に瞳孔領を完全に覆うものまたは閉瞼時に角膜を完全に覆い得ないものをいいます。

3.一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、閉瞼時(普通にまぶたを閉じた場合)に、角膜を完全に覆い得ない程度のものをいいます。

歯の障害に関して

3の2.十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

十歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

「歯科補てつを加えたもの」とは、現実に喪失(抜歯を含む)または、著しく欠損した歯牙(歯冠部の体積4分の3以上を欠損)に対する補てつ、および歯科技工上、残存歯冠部の一部を切除したために歯冠部の大部分を欠損したものと同等な状態になったものに対して補てつしたものをいいます。

耳の障害に関して

3の3.両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの両耳の平均純音聴力レベルが40db以上のものをいいます

両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの両耳の平均純音聴力レベルが40db以上のものをいいます

両耳の平均鈍音聴力レベルが40db以上のものをいいます。

4.一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

1耳の平均純音聴力レベルが70db以上80db未満のもの 又は1耳の平均純音聴力レベルが50db以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいいます。

骨の障害に関して

5.せき柱に変形を残すもの

せき柱に変形を残すもの

「せき柱に変形を残すもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • せき椎圧迫骨折や脱臼などを残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • せき椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかのせき椎に吸収されたものを除く)
  • 3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

手の障害に関して

6.一手の示指、中指又は環指を失ったもの

手の示指、中指又は環指を失ったもの

「手指を失ったもの」とは、次の場合がこれに当たります。

  • 手指を中手骨または基節骨で切断したもの
  • 近位指節間関節(PIP)《親指にあっては指節間関節(IP)》において、基節骨と中節骨とを離断したもの

足の障害に関して

8.一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの

足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの

足指の用を廃したもの」とは、次の場合を言います。

  • 第1の足指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
  • 第1の足指以外の足指を中節骨もしくは基節骨を切断したものまたは遠位指節間関節もしくは近位指節間関節において離断したもの
  • 中足指節関節または近位指節間関節(第1の足指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの

胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

9.胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

胸腹部臓器の後遺障害には、①呼吸器の障害、②循環器の障害、③腹部臓器の障害、④泌尿器の障害、⑤生殖器の障害、があります。

(1)呼吸器の後遺障害

判定方法は①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定、②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による判定、③運動負荷試験の結果による判定があります。

原則として①に判定された等級に認定します。ただし、その等級が②または③により判定された等級より低い場合には、②または③により判定された等級により認定します。

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による障害等級の判定
動脈血酸素分圧が70Torr超で動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外であれば11級となります。

②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による障害等級の判定
下記の場合、11級と認められます。

  • スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35%以下又は肺活量が40%以下の場合で、呼吸困難の程度が軽度(呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないもの)の場合
  • スパイロメトリーの結果が1秒量あたり55~70%又は肺活量が60~80%以下の場合

③運動負荷試験の結果による等級判定

①および②の検査で障害等級に該当しなくても、呼吸機能の低下による呼吸困難が認められ、運動負荷試験の結果から明らかに呼吸機能に障害があると認められるものは、11級に該当します。

(2)循環器の後遺障害 

循環器の後遺障害が11級と認められるのは以下の場合です。

  • 心機能低下(心筋梗塞、狭心症、心臓外傷等による)に関しては、概ね8METs(*メッツ)を超える強度の身体活動が制限されるもの(例:平地を急いで歩く、健康な人と同じ速度で階段を上るという身体活動に支障がないものの、それ以上激しいか、急激な身体活動が制限されるもの)
  • 心臓の弁の置換(房室弁又は大動脈弁の置換)に関しては、「継続的に抗凝血薬療法を行うもの」以外のもの
  • 大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの
(3)泌尿器の後遺障害

泌尿器の後遺障害には、①じん臓の障害、②尿管、膀胱および尿道の障害があります。

①じん臓の障害
じん臓の障害はGFR値という、糸球体がろ過した原尿の量を指す値で等級を判断します。以下の場合、11級と認められます。

  • 一側のじん臓の亡失があり、GFR値(ml/分)が70超~90の場合、11級
  • 一側のじん臓の亡失がなく、GFR値(ml/分)が50超~70の場合、11級

②尿管、膀胱および尿道の障害
以下の場合、尿管、膀胱および尿道の障害が11級と認められます。

  • 外尿道口形成術を行ったもの
  • 尿道カテーテルを留置したもの
  • 残尿が50ml以上100ml未満であるもの
  • 尿道狭窄のため、糸状ブジーを必要とするもの
  • 切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため、常時パッド等を装着は要しないが、下着が少しぬれるもの
  • 頻尿(器質的病変、支配神経の損傷が必要、日中8回以上の排尿が認められ、多飲等の他の原因が認められないことが必要)
(4)生殖器の後遺障害等級

女性の場合、狭骨盤または比較的狭骨盤(産科的真結合線が10.5cm未満または入口部横径が11.5cm未満のもの)となれば11級として認められます。

11級に該当すると、いくらもらえる?

給付基礎日額の223日分が、一時金として支払われます。

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、事故が発生した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額のことです。

試算例

賃金・月給20万円(賃金締切日が毎月末日、労働災害が10月に発生した場合)

→給付基礎日額は、20万円×3か月÷92日(7月:31日、8月:31日、9月:30日)≒6,521円73銭となります。
なお、給付基礎日額に1円未満の端数がある場合は、これを1円に切り上げるので、今回の額は6,522円になります。

労働災害により11級の後遺障害が残ったと認定された場合、障害保障給付金として
6,522円×223日=1,454,406円が支払われることになります。


私たちが、お客様の利益を一番に考え、尽力いたします。
どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。