労災保険の障害等級(5級)

労災保険の障害等級(5級)

労災の5級等級とは?

労働能力喪失率79%の後遺症が残るもの

労働者災害補償保険法施行規則の表に5級に該当する項目が詳しく定められており、いずれかの要件を満たす必要があります。いずれの要件も労働能力喪失率79%の後遺症が残る場合です。下記表を詳しく見ていきましょう。

労災保険の障害等級(5級)

障害等級5級給付内容身体障害
1同184日分
※毎年支給
一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの
1の2神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
1の3胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
2一上肢を手関節以上で失ったもの
3一下肢を足関節以上で失ったもの
4一上肢の用を全廃したもの
5一下肢の用を全廃したもの
6両足の足指の全部を失ったもの

目の障害に関して

1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの

眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になったもの
「失明」とは

「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの、明暗を弁別できないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)または手動弁が含まれます。

「光覚弁」とは

「光覚弁」とは、暗室にて被験者の眼前で照明を点滅させ、明暗が弁別できる視力をいいます。

「手動弁」とは

「手動弁」とは、検査者の手掌を被験者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいいます。

「指数弁」とは

「指数弁」とは、検査者の指の数を答えさせ、それを正答できる最長距離により視力を表わすもので「1m/指数弁」(視力0.02に相当)、「50cm/指数弁」(視力0.01に相当)等と表記します。

視力の測定は、原則として、万国式試視力表によります。実際上これと同程度と認められる文字、図形等の指標を用いた試視力表または視力測定表を用いてもよいとされています。

万国式試視力表は、5mの距離にある直径7.5mmの図形(ランドルト環)を約200ルクスの明るさにおいて、その切れ目が見分けられる場合に視力を1.0とし、被検者の見分けられる最小の図形をこれと比較して、その視力を推定します。例えば、2倍の大きさの図形しか見分けられなければ視力0.5、10倍の大きさの図形しか見分けられなければ視力0.1となります。

「視力」とは、矯正視力をいいます。ただし、矯正が不能な場合には裸眼視力になります。
矯正視力には、眼鏡による矯正、医学的に使用可能なコンタクトレンズによる矯正または眼内レンズによる矯正によって得られた視力が含まれます。

神経系の障害に関して

1の2.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

平均的な人の4分の1程度の労働能力しか有していない場合をいいます。例えば他人の頻繁な指示がなければ簡単な作業もできないような状態です。

臓器の障害に関して

1の3.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

胸腹部臓器の後遺障害には、①呼吸器の障害、②循環器の障害、③腹部臓器の障害、④泌尿器の障害、⑤生殖器の障害があります。

呼吸器の後遺障害

判定方法は①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定、②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による判定、③運動負荷試験の結果による判定があります。

原則として①に判定された等級に認定します。ただし、その等級が②または③により判定された等級より低い場合には、②または③により判定された等級により認定します。

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による障害等級の判定
動脈血酸素分圧が50Torr超〜60Torrで、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr〜43Torrのもの)であれば5級になります。

泌尿器の後遺障害

泌尿器の後遺障害には、①じん臓の障害、②尿管、膀胱および尿道の障害がありますが、5級の場合、②のみで判断します。

具体的には、非尿禁制型尿路変向術を行ったもので、尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないものは5級になります。 

腕の障害に関して

2.一上肢を手関節以上で失ったもの

上肢を手関節以上で失ったもの

「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの
  • 手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

4.一上肢の用を全廃したもの

上肢の用を全廃したもの

「上肢の用を廃したもの」とは、3大関節(肩関節、ひじ関節及び手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものをいいます。

これには上腕神経叢の完全麻痺もこれに含まれます。腕神経叢(わんしんけいそう)とは、上肢の知覚・運動を支配している5本の神経が交わっている部分のことです。

脚の障害に関して

3.一下肢を足関節以上で失ったもの

下肢を足関節以上で失ったもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • ひざ関節と足関節の間において切断したもの
  • 足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

5.一下肢の用を全廃したもの

下肢の用を全廃したもの

「下肢の用を全廃したもの」とは、3大関節(股関節、ひざ関節及び足関節)のすべてが強直したものをいいます。

なお、3大関節が強直したことに加え、足指全部が強直したものもこれに含まれます。

6.両足の足指の全部を失ったもの

両足の足指の全部を失ったもの

両足の指の全てを、中足指節関節以上で失ったものをいいます。

5級に該当すると、いくらもらえる?

給付基礎日額の184日分が、障害が残る限り毎年継続して支払われます。

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、事故が発生した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額のことです。

試算例

賃金・月給20万円(賃金締切日が毎月末日、労働災害が10月に発生した場合)

→給付基礎日額は、20万円×3か月÷92日(7月:31日、8月:31日、9月:30日)≒6,521円73銭となります。
なお、給付基礎日額に1円未満の端数がある場合は、これを1円に切り上げるので、今回の額は6,522円になります。

労働災害により5級の後遺障害が残ったと認定された場合、障害保障給付金として
6,522円×184日=1,200,048円が、障害が残る限り毎年継続して支払われることになります。


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