労災保険の障害等級(7級)

労災保険の障害等級(7級)

労災の7級等級とは?

労働能力喪失率56%の後遺症が残るもの

労働者災害補償保険法施行規則の表に7級に該当する項目が詳しく定められており、いずれかの要件を満たす必要があります。いずれの要件も労働能力喪失率56%の後遺症が残る場合です。下記表を詳しく見ていきましょう。

労災保険の障害等級(7級)

障害等級7級給付内容身体障害
1同131日分
※毎年支給
一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの
2両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
2の2一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
3神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4削除
5胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指を失ったもの
7一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの
8一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11両足の足指の全部の用を廃したもの
12外貌に著しい醜状を残すもの
13両側のこう丸を失ったもの

目の障害に関して

1.一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの

眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になったもの
「失明」とは

「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの、明暗を弁別できないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)または手動弁が含まれます。

「光覚弁」とは

「光覚弁」とは、暗室にて被験者の眼前で照明を点滅させ、明暗が弁別できる視力をいいます。

「手動弁」とは

「手動弁」とは、検査者の手掌を被験者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいいます。

「指数弁」とは

「指数弁」とは、検査者の指の数を答えさせ、それを正答できる最長距離により視力を表わすもので「1m/指数弁」(視力0.02に相当)、「50cm/指数弁」(視力0.01に相当)等と表記します。

視力の測定は、原則として、万国式試視力表によります。実際上これと同程度と認められる文字、図形等の指標を用いた試視力表または視力測定表を用いてもよいとされています。

万国式試視力表は、5mの距離にある直径7.5mmの図形(ランドルト環)を約200ルクスの明るさにおいて、その切れ目が見分けられる場合に視力を1.0とし、被検者の見分けられる最小の図形をこれと比較して、その視力を推定します。例えば、2倍の大きさの図形しか見分けられなければ視力0.5、10倍の大きさの図形しか見分けられなければ視力0.1となります。

なお、「視力」とは、矯正視力をいいます。ただし、矯正が不能な場合には裸眼視力になります。
矯正視力には、眼鏡による矯正、医学的に使用可能なコンタクトレンズによる矯正または眼内レンズによる矯正によって得られた視力が含まれます。

耳の障害に関して

2.両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

両耳の平均純音聴力レベルが70db以上のもの、又は両耳の平均純音聴力レベルが50db以上であり、且つ最高明瞭度が50%以下のもの。

2の2.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

1耳の平均純音聴力レベルが90db以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60db以上のもの。

神経系の障害に関して

3.神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

平均的な人の2分の1程度の労働能力しか有していない場合をいいます。

例えば、頻繁な指示はなくとも労務を遂行できるが、効率が悪い、ミスが多いなどの状態です。

臓器の障害に関して

5.胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

平均的な人の2分の1程度の労働能力しか有していない場合が、これに該当します。

胸腹部臓器の後遺障害には、①呼吸器の障害、②循環器の障害、③腹部臓器の障害、④泌尿器の障害、⑤生殖器の障害、があります。

呼吸器の後遺障害

判定方法は①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定、②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による判定、③運動負荷試験の結果による判定があります。

原則として①に判定された等級に認定します。ただし、その等級が②または③により判定された等級より低い場合には、②または③により判定された等級により認定します。

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による障害等級の判定
動脈血酸素分圧が60Torr超〜70Torrで動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外であるものです。

②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による障害等級の判定
7級となるのは以下の場合です。

(1)スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35%以下又は肺活量が40%以下の場合で、呼吸困難の程度が中等度(呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分ペースでなら、1km程度の歩行が可能であるもの)の場合

(2)スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35~55%又は肺活量が40~60%以下の場合で、呼吸困難の程度が軽度(呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないもの)の場合、呼吸困難の程度が高度(呼吸困難のため、連続して概ね100m以上歩けないもの)又は、中等度(呼吸困難のため、平地でさえ健常者と同様には歩けないが、自分ペースでなら、1km程度の歩行が可能であるもの)の場合

(3)スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35~55%又は肺活量が40~60%以下の場合で、呼吸困難の程度が軽度(呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないもの)の場合、呼吸困難の程度が高度(呼吸困難のため、連続して概ね100m以上歩けないもの)又は軽度(呼吸困難のため、健常者と同様には階段の昇降ができないもの)の場合

循環器の後遺障害

循環器の後遺障害には、①心機能低下、②除細動器またはペースメーカーの植え込み、③心臓の弁の置換、④大動脈解離がありますが、7級となるのは③に関してのみ規定があり、除細動器の植え込みをした場合(②)のみ認められます。

泌尿器の後遺障害

泌尿器の後遺障害には、①じん臓の障害、②尿管、膀胱および尿道の障害があります。

①じん臓の障害の等級
じん臓障害の等級は、GFR値という糸球体がろ過した原尿の量を指す値によって判断します。一側のじん臓の亡失があり、GFR値(ml/分)が30超~50の場合、7級となります。

②尿管、膀胱および尿道の障害
以下の場合、7級となります。

  • 非尿禁制型尿路変向術を行ったもので上記以外(尿が漏出することにより、ストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パッド等の装着ができないもの)のもの
  • 禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
  • 持続性尿失禁を残すもの
  • 切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁のため、終日パッド等を装着し、かつ、パッドをしばしば交換しなければならないもの
生殖器の後遺障害等級に関して

以下の場合が7級となります。

(1)男性の場合

  • 両側の睾丸を失ったもの
  • 常態として精液中に精子が存在しないもの

(2)女性の場合

  • 両側の卵巣を失ったもの
  • 常態として卵子が形成されないもの

手の指の障害に関して

6.一手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指を失ったもの

手の母指を含み三の手指又は母指以外の四の手指を失ったもの

片手の親指を含めた3本の指、または、親指以外の4本の指を失った場合を言います。

「手指を失ったもの」とは、親指は指節間関節(IP)、その他の手指は近位指節間関節(PIP)以上を失ったものとされており、具体的には、次の場合がこれに該当します。

  • 手指を中手骨または基節骨で切断したもの
  • 近位指節間関節(PIP)《親指にあっては指節間関節(IP)》において、基節骨と中節骨とを離断したもの

7.一手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの

手の五の手指又は母指を含み四の手指の用を廃したもの

片手の5本の指の全て、または、親指を含めて4本の指が用を廃したものを言います。

「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、または、中手指節関節(MP)もしくは近位指節間関節(PIP)《親指にあっては指節間関節(IP)》に著しい運動障害を残すものとされており、具体的には、次の場合がこれに該当します。

  • 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
  • 中手指節関節(MP)または近位指節間関節(PIP)《親指にあっては指節間関節(IP)》の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの

親指については、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているものも「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います。

手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものも「手指の用を廃したもの」となります。

これは、医学的に当該部位を支配する感覚神経が断裂し得ると判断される外傷を負った事実を確認するとともに、筋電計を用いた感覚神経伝導速度検査を行い、感覚神経活動電位(SNAP)が検出されないことを確認します。

脚の障害に関して

8.一足をリスフラン関節以上で失ったもの

足をリスフラン関節以上で失ったもの

「リスフラン関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • 足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨及び3個の楔状骨からなる)において切断したもの
  • リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの

9.一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。

  • 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に、ゆ合不全を残すもの
  • 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの

10.一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。

  • 大腿骨の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの
  • 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの
  • 脛骨の骨幹部等に、ゆ合不全を残すもの

11.両足の足指の全部の用を廃したもの

両足の足指の全部の用を廃したもの

「足指の用を廃したもの」とは、親指は末節骨の半分以上、その他の足指は遠位指節間関節(DIP)以上を失ったもの、または中足指節関節(MTP)もしくは、近位指節間関節(PIP)《親指にあっては指節間関節(IP)》に著しい運動障害を残すものとされており、具体的には、次の場合がこれに該当します。

  • 親指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
  • 親指以外の足指を中節骨、もしくは、基節骨を切断したものまたは遠位指節間関節、もしくは、近位指節間関節において離断したもの
  • 中足指節関節または近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)の可動域が、健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの

顔の障害に関して

12.外貌に著しい醜状を残すもの

外貌に著しい醜状を残すもの

外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。

  • 頭部は、手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕(はんこん)、または、頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  • 顔面部は、鶏卵大面以上の瘢痕、または、10円銅貨大以上の組織陥没
  • 頸部は、手のひら大以上の瘢痕

生殖器の障害に関して

13.両側のこう丸を失ったもの

両側のこう丸を失ったもの

片側の欠損や委縮は11級相当となる場合があります。

7級に該当すると、いくらもらえる?

給付基礎日額の131日分が、障害が残る限り毎年継続して支払われます。

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、事故が発生した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額のことです。

試算例

賃金・月給20万円(賃金締切日が毎月末日、労働災害が10月に発生した場合)

→給付基礎日額は、20万円×3か月÷92日(7月:31日、8月:31日、9月:30日)≒6,521円73銭となります。
なお、給付基礎日額に1円未満の端数がある場合は、これを1円に切り上げるので、今回の額は6,522円になります。

労働災害により7級の後遺障害が残ったと認定された場合、障害保障給付金として
6,522円×131日=854,382円が障害が残る限り毎年継続して支払われることになります。


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