労災の後遺障害2級とは ?認定範囲や慰謝料の基準等を解説

労災保険の障害等級(2級)

労働災害によって重篤な怪我や病気を負ってしまった場合、本人だけでなく、支えるご家族にとっても「これからの生活はどうなるのか」「介護費用は賄えるのか」という不安は計り知れません。

特に、後遺障害等級2級に該当する状態は、「労働能力を著しく喪失した」と判断されることが多く、事実上100%に近い喪失と評価される場合があります。そのような状況では、収入の確保と十分な補償を受けることが、その後の人生を支える命綱となります。

本記事では、労災保険における後遺障害等級2級(労災保険法上の等級)の認定基準や給付される保険の種類などについて詳しく解説していきます。

後遺障害等級とは

業務中や通勤途中の事故でけがを負い、治療を続けても体や心に障害が残ってしまうことがあります。
これを「後遺障害」といい、労災保険ではこの障害の程度に応じて補償が支払われます。

後遺障害の等級認定は、「労働者災害補償保険法」(労災保険の仕組みや給付の内容を定めた法律)に基づき、障害の程度に応じた保険給付を行うために必要な手続きです。

等級は1級から14級までに分類されており、等級が重いほど支給される補償も大きくなります。
障害(補償)給付の内容や支給方法は、この等級によって決まる仕組みです。

たとえば、2級に該当するのは「随時介護が必要な状態」など、日常生活に大きな支障があるケースです。

適切な等級に認定されるためには、医師が作成する診断書など、障害の状態を示す医学的資料が必要です。
等級認定は、被災者の生活支援や今後の補償にも影響するため、症状に見合った適正な認定を受けることが重要です。

障害等級2級に認定される範囲

障害等級2級給付内容身体障害
1同277日分
※毎年支給
一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になったもの
2両眼の視力が〇・〇二以下になったもの
2の2神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2の3胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3両上肢を手関節以上で失ったもの
4両下肢を足関節以上で失ったもの

目の障害に関して

1.一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になったもの

2.両眼の視力が〇・〇二以下になったもの

両眼の視力が〇・〇二以下になったもの
「失明」とは

「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの、明暗を弁別できないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)または手動弁が含まれます。

「光覚弁」とは

「光覚弁」とは、暗室にて被験者の眼前で照明を点滅させ、明暗が弁別できる視力をいいます。

「手動弁」とは

「手動弁」とは、検査者の手掌を被験者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいいます。

「指数弁」とは

「指数弁」とは、検査者の指の数を答えさせ、それを正答できる最長距離により視力を表わすもので「1m/指数弁」(視力0.02に相当)、「50cm/指数弁」(視力0.01に相当)等と表記します。

視力の測定は、原則として、万国式試視力表によります。実際上これと同程度と認められる文字、図形等の指標を用いた試視力表または視力測定表を用いてもよいとされています。

万国式試視力表は、5mの距離にある直径7.5mmの図形(ランドルト環)を約200ルクスの明るさにおいて、その切れ目が見分けられる場合に視力を1.0とし、被検者の見分けられる最小の図形をこれと比較して、その視力を推定します。例えば、2倍の大きさの図形しか見分けられなければ視力0.5、10倍の大きさの図形しか見分けられなければ視力0.1となります。

なお、「視力」とは、矯正視力をいいます。ただし、矯正が不能な場合には裸眼視力になります。
矯正視力には、眼鏡による矯正、医学的に使用可能なコンタクトレンズによる矯正または眼内レンズによる矯正によって得られた視力が含まれます。

神経系の障害に関して

2の2.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

脳の器質性障害について、「高次脳機能障害」(器質性精神障害)と「身体性機能障害」(神経系統の障害)に区分した上で、「高次脳機能障害」の程度、「身体性機能障害」の程度及び介護の要否・程度を踏まえて総合的に判断します。

(1)高次脳機能障害

生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、随時介護を要するもの

高次脳機能障害のため2級と認められるのは、「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するもの」である場合です。高次脳機能障害とは認知、行為(の計画と正しい手順での遂行)、記憶、思考、判断、言語、注意の持続などが障害された状態であるとされており、全般的な障害として意識障害や痴ほうも含むとされています。具体的に以下のような場合です。

  • 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
  • 高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
  • 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの
(2)身体性機能障害

生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、随時介護を要するもの

身体性機能障害のため2級と認められるのは、「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するもの」である場合です。具体的には以下のような場合です。

  • 高度の片麻痺が認められるもの
  • 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
(3)せき髄障害

生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、随時介護を要するもの

せき髄症状のため2級と認められるのは、「生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」である場合です。具体的には以下のような場合です。

  • 中等度の四肢麻痺が認められるもの
  • 軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
  • 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

呼吸系の障害に関して

2の3.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

胸腹部臓器の後遺障害には、①呼吸器の障害、②循環器の障害、③腹部臓器の障害、④泌尿器の障害、⑤生殖器の障害があります。2級において問題となるのは呼吸器の障害です。

呼吸器の後遺障害

判定方法は①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による判定、②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による判定、③運動負荷試験の結果による判定があります。
原則として①に判定された等級に認定します。ただし、その等級が②または③により判定された等級より低い場合には、②または③により判定された等級により認定します。

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果による障害等級の判定
以下の場合で、かつ、「随時介護が必要な場合」のとき、2級と認められます。

  • 動脈血酸素分圧が50Torr以下で動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torrのもの)
  • 動脈血酸素分圧が50Torr超~60Torrで動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外

②スパイロメトリーの結果および呼吸困難の程度による障害等級の判定
スパイロメトリーの結果が1秒量あたり35%以下又は肺活量が40%以下の場合で、呼吸困難の程度が高度(呼吸困難のため、連続して概ね100m以上歩けないもの)の場合で、かつ、「随時介護が必要な場合」のとき、2級と認められます。

腕の障害に関して

3.両上肢を手関節以上で失ったもの

両上肢を手関節以上で失ったもの

「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの
  • 手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

脚の障害に関して

4.両下肢を足関節以上で失ったもの

両下肢を足関節以上で失ったもの

「下肢を足関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • ひざ関節と足関節の間において切断したもの
  • 足関節において、脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの

労災保険給付と慰謝料の基準

労災保険には、治療費や休業中の生活費補償、後遺障害や介護への支援など、事故や病気の状況に応じた多様な給付があります。そのなかでも後遺障害2級に該当する場合は、生活や就労への影響が非常に大きいため、特に手厚い補償が受けられる制度になっています。

実際に2級と認定されると、労災保険からは年金形式の継続給付や一時金、介護費用などが支給され、生活再建のための支えとなります。加えて、事故の原因について会社側に法的責任がある場合には、慰謝料の請求が可能になることもあります。

▼後遺障害2級に認定されたときの主な労災保険給付

給付の種類内容金額・基準
障害補償年金労働能力の喪失(働く力を大きく失うこと)等に対して支給される年金給付基礎日額(直近3ヶ月の平均日給をもとに算出される金額)の 277日分/年
障害特別年金障害補償年金に上乗せして支給される特別給付の年金算定基礎日額(特別支給金を計算する際の1日あたりの基準額で、多くの場合は給付基礎日額と同額)の 277日分/年
障害特別支給金一時金として支払われる特別給付320万円
介護(補償)給付随時介護が必要となる場合の補助随時介護(特定の場面で介護が必要になるが、常に付き添いが必要ではない状態):月額 最大44,500円常時介護(日常生活の多くの場面で介護が必要な状態):月額 最大177,990円(いずれも2023年4月以降)
その他の給付健康診断・社会復帰支援・アフターケアなど二次健診給付、社会復帰促進事業、アフターケア給付など

障害補償年金と障害特別年金は、障害等級に応じて定められた日数を基準に年金形式で支給されます。後遺障害2級の場合は、いずれも「277日分」を基準として算定されます。これに加え、一時金としての障害特別支給金や、介護が必要な場合の月額給付など、重度の後遺障害を抱える生活を支える複数の給付が用意されています。

さらに、精神的苦痛に対する慰謝料についても、会社に安全配慮義務違反などの法的責任が認められた場合には、損害賠償として請求が可能になることがあります。たとえば、裁判例や弁護士基準では、後遺障害2級に対して2,300万円前後の慰謝料が認められたケースもあります。

もっとも、こうした請求を成立させるためには、事故が会社の過失によって発生したことを具体的に証明する必要があり、法的な知識や専門的な立証が不可欠です。詳細は次項で解説します。

会社に慰謝料を請求するための立証要件

会社に慰謝料を請求するには、事故が「会社の過失によって発生したこと」を立証する必要があります。
これは、過失の有無にかかわらず給付される労災保険とは異なり、会社の法的責任を前提とする損害賠償請求であるためです。

主な責任の根拠には、以下の3つがあります。

  • 不法行為責任(民法第709条)
     → 会社が安全対策を怠り、労働者に損害を与えた場合
  • 安全配慮義務違反による債務不履行(労働契約法第5条・民法第415条)
     → 会社が労働者の安全に配慮する義務を果たしていなかった場合
  • 使用者責任(民法第715条)
     → 会社がその指揮・管理する労働者の過失について責任を負う場合

これらのいずれかに該当することを示すためには、たとえば「労働環境が明らかに危険であった」「適切な安全教育がなかった」「不具合を知りながら機械を使用させた」など、具体的な事実と会社側の落ち度(過失・安全配慮義務違反)を証明することが求められます。

後遺障害2級のように損害が大きい場合、慰謝料額が高額となる可能性があり、話し合い(示談)で解決できず、裁判に進むこともあります。
こうした請求を成立させるには、証拠収集や法的構成を含めて専門的対応が必要となることが多いです。
弁護士のサポートを受けながら進めることで、より適切な対応がしやすくなります。

後遺障害2級に認定されるためのポイント

後遺障害2級の認定には、事故直後からの適切な治療・検査、医学的な根拠の記録が欠かせません。特に重度障害では、症状の経過や介護の必要性を客観的に示す資料が重視されます。

治療は専門医のもとで継続し、MRIやCT、神経学的検査などを適切なタイミングで行うことが重要です。未受診が続くと、「症状が軽快した」と判断される恐れがあるため注意が必要です。

2級に該当するケースでは、日常生活で随時介護が必要とされることも多く、その必要性を裏付ける書類も準備しましょう。医師の「意見書」や、本人・家族による「日常生活報告書」が有力な証拠となります。

生活動作(食事、移動、入浴など)のうち、どこで介助が必要かを具体的に記録しておくと、介護の実態が伝わりやすくなります。

2級に該当すると、いくらもらえる?

給付基礎日額の277日分が、障害が残る限り毎年継続して支払われます。

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金とは、原則として、事故が発生した日の直前3か月間にその労働者に対して支払われた金額の総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額のことです。

試算例

賃金・月給20万円(賃金締切日が毎月末日、労働災害が10月に発生した場合)

→給付基礎日額は、20万円×3か月÷92日(7月:31日、8月:31日、9月:30日)≒6,521円73銭となります。
なお、給付基礎日額に1円未満の端数がある場合は、これを1円に切り上げるので、今回の額は6,522円になります。

労働災害により2級の後遺障害が残ったと認定された場合、障害保障給付金として
6,522円×223日=1,806,594円が障害が残る限り毎年継続して支払われることになります。


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