仕事中が原因で死亡したとき

仕事が原因で従業員が死亡することがあります。仕事中に機械に挟まれるなどの事故や、仕事が原因で脳梗塞を発症し死に至る場合や、仕事がつらくて鬱状態になり自殺してしまう場合などです。

死に至った経緯はさまざまですが、労災の要件を満たせば、遺族は補償を受けることができます。今回は、労災保険から受給できる補償の内容と手続きについて詳しく見ていきましょう。

1.労災保険からの補償

業務が原因で亡くなった労働者の遺族に対しては、遺族補償給付が支給され、葬祭を行った遺族などに対しては、葬祭料が支給されます。
遺族補償給付には、遺族補償年金と遺族補償一時金の2種類があります。

(1)遺族補償年金

受給資格者のうち、最も順位が高い者(受給権者)に対してのみ支給されます。遺族補償年金の受給資格者となるのは、被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹ですが、妻以外の遺族については、被災労働者の死亡の当時に一定の高齢又は年少であるか、あるいは一定の障害の状態にあることが必要です。

なお、「労働者の収入によって生計を維持していた」とは、もっぱら被災労働者の収入によって生計を維持していた場合だけではなく、被災労働者の収入によって生計の一部を維持していた、いわゆる「共稼ぎ」の場合もこれに含まれます。

遺族補償給付の内容

一時金として支払われる遺族特別支給金は、遺族の人数に関わらず300万円です。遺族が2人以上いる場合は、この額を等分した額が、それぞれの受給権者が受ける額となります。

遺族補償年金は、遺族数が1人のとき、給付基礎日額の153日分を受給でき、その遺族が55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻の場合、給付基礎日額の175日分を受給でき、より手厚い補償が受けられます。
また、遺族特別年金は、遺族補償年金と同様、 遺族数が1人のとき、給付基礎日額の153日分を受給でき、その遺族が55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻の場合、給付基礎日額の175日分を受給できます。

遺族補償給付請求の手続きは、労働基準監督署長に遺族補償年金支給請求書を提出し、特別支給金の支給申請は、遺族補償給付の請求と同時に、同一の様式で行うことになります。

この手続きには、被災労働者の死亡の事実及び死亡の年月日を証明することができる書類、請求人と被災労働者の身分関係を証明することができる書類、請求人は被災労働者の収入によって生計を維持していたことを証明できることができる書類が必要となります。また、受給資格者であることを証明する書類が必要となる場合もあります。

(2)遺族補償一時金

遺族補償一時金が支給されるのは、次のいずれかの場合です。

  • 被災労働者の死亡の当時、遺族補償年金を受ける遺族がいない場合
  • 遺族補償年金の受給権者が最後順位者まですべて失権したとき、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額及び遺族補償年金前払い一時金の額の合計額が、給付基礎日額の1,000日分に満たない場合

遺族補償一時金の受給資格者は、順位が高い者から順に、配偶者、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母、その他の子・父母・孫・祖父母、兄弟姉妹です。この中で最も順位が高い者が受給権者となります。

給付の内容は、上記①の場合、遺族補償一時金は給付基礎日額の1,000日分、遺族特別支給金は300万円、遺族特別一時金は算定基礎日額の1,000日分です。
上記②の場合は、遺族補償一時金は給付基礎日額の1,000日分、遺族特別一時金は算定基礎日額の1,000日分、遺族特別支給金は給付されません。

遺族補償一時金請求の手続きは、労働基準監督署長に遺族補償一時金支給請求書を提出し、特別支給金の支給申請は、遺族補償一時金の請求と同時に、同一の様式で行うことになります。
この手続きには、①あるいは②の場合の、受給資格者であることを証明する書類が必要となります。

(3)遺族補償年金前払一時金

遺族補償年金を受給することになった遺族は1回に限り、年金の前払いを受けることができます。これは、若年停止により年金の支給が停止されている場合でも受けることができます。

前払一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1,000日分の中から、希望する金額を選択できます。なお、前払い一時金が支給されると、遺族補償年金は各月分の合計額が前払一時金の額に達するまでの間、支給が停止されます。

請求の手続きは、遺族補償年金の請求と同時に、遺族補償年金・遺族年金前払い一時金請求書を労働基準監督署長に提出して行います。

2.葬祭料

葬祭料は、葬祭を行うにふさわしい遺族に対して支給されます。葬祭を執り行う遺族がなく、社葬として被災労働者の会社が葬祭を行った場合には、会社に対して葬祭料が支給されることになります。

葬祭料の額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額ですが、この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は給付基礎日額の60日分が支給されます。

請求の手続きは、労働基準監督署長に葬祭料請求書を提出することにより行います。
被災労働者の死亡の事実及び死亡の年月日を証明することができる書類を添付する必要がありますが、遺族補償給付の請求書の提出と同時に請求する場合には必要ありません。

3.社会復帰促進等事業

労災保険では、保険給付のほかに遺族に対する援護を図るため、社会復帰促進等事業を実施しています。労災就学等援護費や長期家族介護者援護金を受給できる場合があります。

(1)労災就学等援護費

労災就学等援護費には労災就学援護人労災就労保育援護費の2種類があり、遺族補償年金を受給していて

  • 生計を同じくしている子が学校に在学中、又はこの子を就労のために保育園などに預けている場合
  • 受給している本人が、在学中または保育所などに預けられている場合

に支給されます。
「労災就学等援護費支給申請書」に在学証明書などの必要な書類を添えて、労働基準監督署長に提出する手続きが必要となります。

(2)長期家族介護者援護金

一定の障害により、障害等級第1級の障害補償年金等を10年以上受給していた方が、業務外の原因で死亡した場合、遺族に長期家族介護者援護金が支給されます。
長期家族介護者援護金支給申請書に必要書類を添付し、労働基準監督署に提出する手続きが必要となります。

労災で家族が亡くなると、残された遺族の精神的、経済的負担は大変なものです。大変な状況の中、様々な手続きを進めていかなければなりません。死亡が労災に該当するか認定が困難な場合や、会社に対し損害賠償請求できる場合もあるでしょう。自身が補償金の受給資格者であることに気付かないケースもあります。

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