労災での手指の後遺障害

1.手指の名称

労災での手指の後遺障害

手の指は、5個の中手骨と14個の指骨で構成されています。
掌の部分にある骨を中手骨といい、指骨は、指先の爪の部分を末節骨、その次の第一関節と第二関節の間を中節骨、指の根本の骨を基節骨といいます。

関節は、末節骨と中節骨の間の関節を遠位指節間関節(DIP関節)、中節骨と基節骨の間の関節を近位指節間関節(PIP関節)、基節骨と中手骨の間の関節を中手指節関節(MP関節)、と呼びます。

親指(母指)は、末節骨と基節骨で構成されており、その間にある関節を指節間関節(IP関節)といいます。

2.手指の後遺障害の種類

手指の後遺障害には、欠損障害、機能障害の2つの種類があります。
欠損障害とは、手指の近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)から失った後遺障害です。

機能障害とは、手指の関節の動きが悪くなった後遺障害、及び欠損障害に該当しない部位を失った後遺障害です。
なお、手指の欠損や骨折に伴い、神経障害が残ることもあります。

欠損障害

第3級5号両手の手指の全部を失ったもの
第6級8号1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
第7級6号1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
第8級3号1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
第9級12号1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
第11級8号1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
第12級9号1手の小指を失ったもの
第13級7号1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
第14級6号1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

(1)「手指を失ったもの」とは?

「手指を失ったもの」とは、おや指は指節間関節(IP)、その他の手指は近位指節間関節(PIP)以上を失ったものとされており、具体的には、次の場合がこれに該当します。

  • 手指を中手骨または基節骨で切断したもの
  • 近位指節間関節(PIP)《おや指にあっては指節間関節(IP)》において、基節骨と中節骨とを離断したもの

(2)「指骨の一部を失ったもの」とは?

「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含む)ことがエックス線写真等により確認できるものをいいます。

機能障害

第4級6号両手の手指の全部の用を廃したもの
第7級7号1手の5の手指またはおや指を含み4の手指の用を廃したもの
第8級4号1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
第9級13号1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
第10級7号1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
第12級10号1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
第13級6号1手のこ指の用を廃したもの
第14級7号1おや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

(1)「手指の用を廃したもの」とは?

「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨の半分以上を失い、または、中手指節関節(MP)もしくは近位指節間関節(PIP)《おや指にあっては指節間関節(IP)》に著しい運動障害を残すものとされており、具体的には、次の場合がこれに該当します。

  • 手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
  • 中手指節関節(MP)または近位指節間関節(PIP)《おや指にあっては指節間関節(IP)》の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの

おや指については、橈側(とうそく)外転または掌側(しょうそく)外転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているものも「著しい運動障害を残すもの」として取り扱われます。

手指の末節の指腹部及び側部の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものも「手指の用を廃したもの」として取り扱われます。

これは、医学的に、当該部位を支配する感覚神経が断裂し得ると判断される外傷を負った事実を確認するとともに、筋電計を用いた感覚神経伝導速度検査を行い、感覚神経活動電位(SNAP)が検出されないことを確認することによって認定します。

なお、感覚の完全脱失とは、表在感覚のみでなく深部感覚をも消失した場合を言います。表在感覚のみではなく深部感覚をも完全に脱失するのは、外傷により感覚神経が断裂した場合に限られます。

(2)「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは?

「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは、次のいずれかに該当するものをいいます。

・遠位指節間関節(DIP)が強直したもの
・屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないものまたはこれに近い状態にあるもの

3.手指の神経症状

手指の欠損や骨折に伴い手指に痛みや痺れ等が残ってしまった場合、神経症状として後遺障害認定される場合があります。

その神経症状が、労働災害によるものと医学的に証明できる場合には12級13号、医学的に説明可能に留まる場合には14級9号が適用されます。

12級13号の認定には、神経症状が交通事故により生じたことが、医学的見地から客観的に証明できる必要がありますが、14級9号の認定には、 労働災害によるものと神経症状の整合性があれば足ります。

4.労災での手指の後遺障害のまとめ

手指に関する後遺障害の認定に際しては、どのような症状を診断してもらい労災を申請するか、労災申請の書き方によって等級が大きく異なります。障害を負った本人やその家族の方が様々な手続きを全て行うのは相当の時間と労力が必要です。

労災を多く取り扱ってきた法律事務所テオリアでは、適切な書類の書き方はもちろん、受診する際のポイント等をお教えいたしますし、会社との交渉、場合によっては訴訟まで、あらゆる法的手続きを行うことが可能です。申請後の見通しについても、予想される等級と、受給できる金額、弁護士費用について、受任前に詳細にご説明します。手指の後遺障害を疑われる方やご家族の方、ぜひお気軽にご相談ください。