労災での耳に関する後遺障害

労災での耳に関する後遺障害

耳の後遺障害には大きく分けて3つの種類があります。耳の本来の「聴く」機能に障害が生じたこと、耳自体に傷がついたこと、その他の耳漏れや耳鳴りが続くこと、に分類されます。

労災の場面においては、大きな音がする工場で継続して勤務したことにより聴力が低下したり、作業現場での落下物に当たって耳が欠損してしまうようなケースが考えられます。

1.聴力障害

両耳について

第4級の3両耳の聴力を全く失ったもの
第6級の3両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
第6級の3の2一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第7級の2両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第7級の2の2一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第9級の6の2両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
第9級の6の3一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
第10級の3の2両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
第11級の3の3両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

聴力障害は、「純音聴力検査」と「語音聴力検査」の結果を基礎として認定します。
「純音聴力検査」とは、単一周波数からなる音を用いる検査で、聴力の程度は「dB」で表します。
「語音聴力検査」とは、日常使っている言語音を検査音として用いる検査で、その聞こえ方を検査します。検査値は「明瞭度」として%で表わします。

①「両耳の聴力を全く失ったもの」第4級の3

両耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のもの、または、両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のものをいいます。

②「両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」第6級の3

両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上のもの、または、両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上80dB未満であり、かつ、最高明瞭度が30%以下のものをいいます

③「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」第6級の3の2

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のものをいいます。

④「両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」第7級の2

両耳の平均純音聴力レベルが70dB以上のもの、または、両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいいます。

⑤「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」第7級の2の2

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のものをいいます。

⑥「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」第9級の6の2

両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの、または、両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のものをいいます。

⑦「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」第9級の6の3

1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のものをいいます。

⑧「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」第10級の3の2

両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの、または、両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のものをいいます。

⑨「両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」第11級の3の3

両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上のものをいいます。

片耳について

第9級の7一耳の聴力を全く失ったもの
第10級の4一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
第11級の4一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第14級の2の2一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

①「1耳の聴力を全く失ったもの」第9級の7

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上のものをいいます。

②「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」第10級の4

1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満のものをいいます。

③「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」第11級の4

1耳の平均純音聴力レベルが70dB以上80dB未満のもの、または、1耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が50%以下のものをいいます。

④「1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」第14級の2の2

1耳の平均純音聴力レベルが40dB以上70dB未満のものをいいます。

(1)聴力検査の実施時期

騒音性難聴の聴力検査は、85dB以上の騒音にさらされた日以後7日間は行ってはいけません。
騒音性難聴以外の難聴については、療養効果が期待できることから、治癒した後、すなわち療養が終了し症状が固定したのちに検査を行うことになっています。

(2)聴力検査の方法

障害等級認定のための聴力検査は、日本聴覚医学界制定による聴覚検査法により行います。
聴力検査は日を変えて3回行う必要がありますが、聴力検査のうち語音による聴力検査の回数は、検査結果が適正と判断できる場合は1回でも良いとされています。
なお、検査と検査の間隔は7日程度空ければ足ります。

(3)障害等級の認定

障害等級の認定は、2回目と3回目の測定値の平均純音聴力レベルの平均により行います。2回目と3回目の測定値の平均純音聴力レベルに10dB以上の差がある場合には、更に聴力検査を重ね、2回目以降の検査の中でその差が最も小さい2つの平均純音聴力レベルの平均により、障害認定が行われます。

2.欠損障害

第12級の4一耳の耳かくの大部分を欠損したもの

「耳かくの大部分の欠損」とは、耳介の軟骨部の1/2以上を欠損したものを言います。
なお、耳介軟骨部の2分の1以上には達しない欠損であっても、「外貌の単なる醜状」の程度に該当する場合は、第12級の14に認定されます。

3.その他の障害

耳漏と耳鳴りに関しては、直接規定はないものの、症状に応じて以下のように障害認定が準用されます。

(1)耳漏

耳漏とは、耳の中の液体が、鼓膜が破れて出てくる症状を言います。

第12級常時耳漏があるもの
第14級常時ではないが、耳漏があるもの

(2)耳鳴り

第12級難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの
第14級難聴に伴い常時耳鳴りがあることが合理的に説明できるもの

耳鳴りに関する検査は、ピッチ・マッチ検査という、耳鳴りの音の高さの検査と、ラウドネス・バランス検査という耳鳴りの音の大きさの検査によります。

「難聴に伴い」とは、騒音性難聴の場合は、騒音のある職場を離職した者の難聴が、業務上と判断され、その難聴に伴い耳鳴りがある場合を言います。他方、騒音性難聴以外の難聴の場合は、その難聴が業務上と判断され、治癒後も継続して難聴に伴い耳鳴りがある場合を言います。

「耳鳴が常時ある」とは、耳鳴りが常時存在するものの、昼間は外部の音によって耳鳴りが遮蔽されているため自覚症状がなく、夜間のみ耳鳴りの自覚症状がある場合も含まれます。

「耳鳴りがあることが合理的に説明できる」とは、本人が耳鳴りがあると訴えており、かつ、耳鳴りの有ることが騒音ばく露歴や音響外傷等から合理的に説明できることを言います。

4.耳に関する後遺障害まとめ

耳に関する後遺障害の認定に際しては、どのような症状を診断してもらい労災を申請するか、労災申請の書き方によって等級が大きく異なります。障害を負った本人やその家族の方が様々な手続きを全て行うのは相当の時間と労力が必要です。

労災を多く取り扱ってきた法律事務所テオリアでは、適切な書類の書き方はもちろん、受診する際のポイント等をお教えいたしますし、会社との交渉、場合によっては訴訟まで、あらゆる法的手続きを行うことが可能です。申請後の見通しについても、予想される等級と、受給できる金額、弁護士費用について、受任前に詳細にご説明します。耳の後遺障害を疑われる方やご家族の方、ぜひお気軽にご相談ください。


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