仕事場で怪我や病気、労働災害はどの時点で弁護士に相談した方が良いのか?

労働災害の場面において、後遺障害という言葉がよく出てくるのですが、そもそも後遺障害に言う「障害」は「傷害」とは異なるのでしょうか。

わかりやすく言えば、「傷害」は治る怪我、「障害」は治らない怪我を指します。
すなわち、仕事中に怪我をして「傷害」を負い、怪我を治すため通院しても治る見込みはなく症状が固定した状態が「障害」を負ったと言えるのです。一般的には、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態を言います。

後遺「障害」は、病気や怪我をした時点ではなく、通院して症状が固定した場合に、初めて問題となるのです。

1.後遺障害とは?

症状が固定し、何らかの病気や怪我が残っていると本人が感じる場合、あらゆる場合において後遺障害と認定され、労災保険により金銭が給付されるわけではありません。
病気や怪我が、厚生労働省の規定に定める障害等級のいずれかに該当し初めて後遺障害と認定されるのです。

後遺障害と聞くと、身体の自由が利かなくなったとか、身体の一部分が無くなった等、重い症状が残る状態のイメージがありますが、必ずしもそればかりが後遺障害と認定されるわけではありません。後遺障害の内容は様々で、労務遂行に際しミスが多くなり労務の効率が落ちた場合や、局部に痛みが残る場合など、身体の部位や症状の程度に応じて規定があります。

この規定は、包括的で曖昧ともとれる文言もあり、認定に際し医師による慎重で確実な診断が常に求められます。

2.後遺障害の認定はどのようにされるのか

では、後遺障害の認定は誰によって、いつ、どのようにされるのでしょうか。

ここで重要なのは、本人自身が動かなければ、後遺障害の認定もされず何も給付されないということです。
まず、本人が、通院してしばらくたってもなかなか治癒しないと感じた場合、医者に後遺障害が残るか相談し、医師に後遺障害診断書を書いてもらう必要があります。

労災認定に際しては、この診断書の記載内容で等級がほぼ決まるため、医師がどのように診断書を記載するかが非常に重要です。先ほど述べた通り、後遺障害とは、医療行為によって治しきれなかった症状です。病気を治すことが本業である医師にとって、治しきれなかった症状を詳しく羅列する行為は倦厭しがちであり面倒と感じてしまうことがあるでしょう。加えて、医師には、等級に該当する症状を細かく書いてあげて、患者に労災保険を多めに貰えるようにしてあげようという考えは、通常ありません。したがって、診断書の記載内容は本人自身が調べ、どのように書いてほしいかを明確に医師に伝えるべきでしょう。

次に、本人が診断書などの必要な資料を添えて、所轄の労働基準監督署長に「障害補償給付支給請求書」を提出します。その際、事業主は仕事中に本人が怪我をして休業中であることを証明し、請求書の提出に協力してもらう必要があります。

請求書を受け取った労働基準監督署は、提出された書類を精査し、場合によっては調査官による聞き取りなどを行い、後遺障害等級に該当すると判断した場合に支給を決定します。
そうして初めて、本人へ支給決定通知書が送付され、障害補償給付金が支払われることになります。労働基準監督署が請求書を受け付けてから、給付が決定されるまではおおよそ1か月ですが、場合によっては1か月以上を要することもあります。

認定された後遺障害等級が不当に低いなど、労災保険給付に関する決定に不服がある場合には、その決定を行った労働基準監督署長を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をすることができます。

3.後遺障害が認定されると何がもらえるのか

仕事中に病気や怪我をし、それが原因で休業せざるを得ないとき、休業している間は労災保険により休業補償給付を受けることができます。休業補償は、その人が休業している間、給料の約8割が給付されます。
ところが、症状が固定し後遺障害が認定されると、これまで支給されていた休業補償給付が支給されなくなります。その代わり、労災保険より等級に応じた障害補償給付を受給することができます。
障害補償給付は、言わば将来的に得られなくなった給料の一部を補てんするもので、収入によって異なります。

障害補償給付は等級によって大きく異なり、例えば14級と認定された場合、給与の56日分が一回支払われるだけですが、1級と認定された場合、給与の313日分が毎年継続して支払われることになります。
さらに、後遺障害が認定されるとお見舞い金のような意味で障害特別支給金が支払われます。これも等級によって金額が異なり、例えば14級と認定された場合は8万円が支給されますが、1級と認定された場合、342万円が支給されます。

このため、どの等級として認定されるかによって、受給できる金額が大きく変わってくるといえます。今後の生活を維持し療養生活をする上でも、不当に低い等級の認定を受けてしまう事態は避けなければいけません。

4.どの時点で弁護士に相談すべきか?

これまで述べてきた通り、どの等級に認定されるかが非常に重要であるとお分かりいただけたと思います。 それでは、仕事中に病気や怪我をした場合、労災認定をしてもらって様々な給付金を確実に受けるためには、どの時点で弁護士に相談すべきなのでしょうか。

結論から言いますと、「病気や怪我をした時点ですぐ」弁護士に相談すべきです。

従業員が仕事中に病気や怪我をして、労災申請をしようとし、会社も協力してくれました。本人が会社の証明を受けて労働基準監督署に労災申請を行えば、休業補償を受けられるでしょう。そして治療を継続しているうちに「どうも良くならないな」と思い医師に相談すると、これ以上は治療しても治らないと言われた。そこで後遺障害認定をしてもらい障害保障給付金の申請をしたところ、認定された障害等級が不当に低くてこれまでの生活を維持できそうにない。後遺障害が原因で就労するのも困難だ。そこで初めて、「どうしよう、弁護士に相談しようか・・・」

これでは遅すぎるのです。上記のような経緯にはいくつも突っ込みどころがあります。

まず、会社側が、後に損害賠償請求をされるのを避けるため、事故に関して本人に過失があったことにしたい場合があります。労災申請に協力するから、自分にも非があることにしてくれないか、といった具合です。言われるがままに申請してしまうと後で覆せません。会社に対して損害賠償請求をしようと考えても、自分に非があると認めてしまった以上請求は難しいでしょう。

そもそも、会社に過失があり病気や怪我をした場合、会社に対して従業員の安全配慮をしていないことを理由に損害賠償請求ができます。これは労災とは別の話です。損害賠償を請求できることなど、会社はもちろん、労働基準監督署も誰も教えてくれません。労災保険をもらっただけで何も気づかず納得しているけれど、本当は何千万円も会社に請求できるケースもあるのです。

次に、後遺障害認定を受けて障害補償給付をもらうより、通院を継続して休業補償を長くもらう方が多額の金銭を受給できる場合があります。例えば通院中は治療費に加えて給料の8割が出ていたのに、14級と認定されると、8万円に加えて給料の56日分が支給されて、労災による給付は終了となります。治療の必要がないのに偽って休業補償をもらうべきではありませんが、病気や怪我による金銭的負担は少ない方が良いでしょう。

逆に、治療を辞めて後遺障害認定された方が多額の受給ができる場合もあります。したがって、安易に自分の判断で申請内容を変更あるいは継続するか決定するではなく、慎重に検討すべきです。
また、前述したとおり等級認定は一度されたら覆らないため、医師の診断は非常に重要になります。診断書の記載内容をどのように書いてほしいかを医師に伝えなければならないため、本人が確実に等級認定される記載を学ぶ必要があります。

以上のような事情から、「病気や怪我をした時点ですぐ」弁護士に相談すべきという結論になるのです。
なお、労災に関するサポートを行う専門家として、行政書士や司法書士も挙げられるでしょう。しかし、訴訟まであらゆる手続きに対応可能であるのは弁護士だけですので、あらゆる可能性を想定し、最初から弁護士に相談する方が良いでしょう。

法律事務所テオリアでは、法律相談を無料で行っているため、仕事中に病気や怪我をされたらまず、気軽にご相談ください。客観的な資料から、会社がちゃんと協力しているか、会社に対して別途損害賠償請求をできないか、等級認定の可能性と受給できる金額、医師への伝え方、あらゆる場面で的確にサポートいたします。問題がなければそれに越したことはないですし、問題が生じそうであれば早めに予防策を練ることができます。


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