醜状(シュウジョウ)傷の後遺障害

醜状(シュウジョウ)傷の後遺障害

醜状(シュウジョウ)の後遺障害は、傷を負った部位ごとに大きく2つに分けられ、露出面である「外貌」(頭部、顔面部、頸部)と「上肢・下肢」に分けられます。

さらに、上肢・下肢のうち露出面以外の部位にも傷の程度に応じて等級の規定が準用されます。 そして部位の中でも、傷跡の大きさに応じて等級認定されます。

労災の場面においては、職場で火災に遭い頭部に火傷の跡が残ったり、作業中に部品が当たり顔に線状の傷が残った場合などが考えられます。

1.外貌(ガイボウ)の醜状(シュウジョウ)障害

第7級12号外貌に著しい醜状を残すもの
第9級16号外貌に相当程度の醜状を残すもの
第12級14号 外貌に醜状を残すもの

(1)外貌における「著しい醜状を残すもの」とは?

外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。

  • 頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損
  • 顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没
  • 頸部にあっては、手のひら大以上の瘢痕

(2)外貌における「相当程度の醜状」とは?

外貌における「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいいます。

(3)外貌における単なる「醜状」とは?

外貌における単なる「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。

  • 頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
  • 顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3cm以上の線状痕
  • 頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕

障害補償の対象となる外貌の醜状は人目に付く程度以上のものでなければならないので、眉毛や頭髪等に隠れる部分については醜状として取り扱われなければなりません。

顔面神経麻痺は、神経系統の機能の障害ですが、その結果として現れる「口のゆがみ」は単なる醜状として扱われます。

耳の軟骨部分の半分以上を欠損した場合は「著しい醜状」とし、その一部を欠損した場合は単なる「醜状」となります。
鼻の軟骨部分の全部または大部分を欠損した場合は「著しい醜状」とし、その一部又は鼻翼を欠損した場合は単なる「醜状」となります。

2個以上の傷により一つの醜状となる場合には、その傷の面積や長さを合算して等級が認定されます。
火傷の治癒後の黒褐色変色又は色素脱失による白班等であって、永久的に残ると認められ、かつ人目に付く程度以上のものは、単なる「醜状」として取り扱われます。

2.上肢・下肢の醜状障害(露出面)

第14級の3上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
第14級の4下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの

➀「上肢の露出面」とは上腕(肩関節以下)から指先までをいいます。
➁「下肢の露出面」とは、大腿(股関節以下)から足の背(足の甲)までをいいます。

3.上肢・下肢の醜状障害(露出面以外)

第12級準用 両上腕又は両大腿のほとんど全域、胸部又は腹部の各々の全域、背部及び臀部の全面積の1/2程度を超えるもの

第14級準用 上腕又は大腿のほとんど全域、胸部又は腹部の各々の面積の1/2程度、背部及び臀部のその全面積の1/4程度を超えるもの

4.男女の等級差

外貌醜状に関する後遺障害の認定には「女子の外貌に著しい醜状を残すもの(旧第7級12号)」など男女の区別がありましたが、現在は統一されています。かつては、同じ場所に同じ大きさの傷痕が残った場合、傷跡により受ける不利益は、女性の方が大きいと考えられていたからです。

しかし、2010年京都地裁の判例により、「外貌醜状」における男女格差は違憲とされました。これを受けて翌年の後遺障害等級改正において男女の区別が撤廃されました。

5.損害賠償請求の際の慰謝料

醜状障害を負ったことについて、会社に責任があると認められるとき、労災申請とは別に、会社に対する損害賠償請求をすることが可能です。損害賠償請求に際しては、慰謝料や休業損害、逸失利益などを請求することになるのですが、醜状障害については逸失利益の有無が問題となることがあります。

醜状障害は、身体の機能を制限するような後遺障害ではなく、労働能力に直接影響することは考えづらいので、逸失利益が認められないことも多いのです。

しかし、接客業や、タレントなど容姿が重視される職業に就いている場合、実質的にこれまでと同様の仕事を継続するのは難しいでしょう。その他の職業でも、営業職であれば内勤営業に異動になる等、醜状痕を原因として職場内で配置転換されたり、職業選択の幅を狭められるなどの形で逸失利益が認められる場合もあります。

逸失利益の判断に際しては、実際の仕事に対する影響の程度は、醜状の部位・形状・大きさのほか、職業・職種・年齢等を基準にしています。

6.醜状(シュウジョウ)傷のまとめ

醜状に関する後遺障害の認定に際しては、どのような症状を診断してもらい労災を申請するか、労災申請の書き方によって等級が大きく異なります。障害を負った本人やその家族の方が様々な手続きを全て行うのは相当の時間と労力が必要です。

労災を多く取り扱ってきた法律事務所テオリアでは、適切な書類の書き方はもちろん、受診する際のポイント等をお教えいたしますし、会社との交渉、場合によっては訴訟まで、あらゆる法的手続きを行うことが可能です。申請後の見通しについても、予想される等級と、受給できる金額、弁護士費用について、受任前に詳細にご説明します。醜状障害を疑われる方やご家族の方、ぜひお気軽にご相談ください。


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