労災での上半身に関する後遺障害

上半身に関する後遺障害

上半身に関する後遺障害

上半身に関する後遺障害については、部位ごとに、頭部(脳、目、耳、鼻、口)、せき柱、体幹骨、胸腹部臓器、上肢、手指に分けることができます。

1.脳の後遺障害

脳に関する障害は、主に高次脳機能障害です。

第1級生命維持に必要な身の回り処理の動作について常時介護を要するもの
第2級生命維持に必要な身の回りの処理の動作について随時介護を要するもの
第3級生命維持に必要な身の回りの処理の動作は可能であるが、労務に服することができないもの
第5級極めて軽易な労務にしか服することができないもの
第7級軽易な労務にしか服することができないもの
第9級通常の労務に服することはできるが就労可能な職種が相当程度に制約されるもの
第12級通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの
第14級第12級よりも軽度のもの

2.目の後遺障害

目の後遺障害は、視力障害、調節機能障害、運動機能障害、視野障害、まぶたの障害に分類されます。

(1)視力障害

第1級両眼が失明
第2級1眼が失明、他眼の視力が0.02以下
第2級両眼の視力が0.02以下
第3級1眼が失明、他眼の視力が0.06以下
第4級両眼の視力が0.06以下
第5級1眼が失明、他眼の視力が0.1以下
第6級両眼の視力が0.1以下
第7級1眼が失明、他眼の視力が0.6以下
第8級1眼が失明した、もしくは1眼の視力が0.02以下
第9級両眼の視力が0.6以下
第9級1眼の視力が0.06以下
第10級1眼の視力が0.1以下
第13級1眼の視力が0.6以下

 (2)調節機能障害

第11級両眼に著しい調整機能障害を残すもの
第12級1眼に著しい調整機能障害を残すもの

(3)運動機能障害

第10級正面視に複視を残すもの
第11級両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの
第12級単眼の眼球に著しい運動障害を残すもの
第13級正面視以外に複視を残すもの

(4)視野障害

第9級両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
第13級単眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

(5)まぶたの欠損障害

第9級両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
第11級1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
第13級両眼のまぶたの一部に著しい欠損を残すもの
第13級両眼にまつげはげを残すもの
第14級1眼のまぶたの一部に著しい欠損を残すもの
第14級1眼にまつげはげを残すもの

(6)まぶたの運動障害

第11級両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
第12級1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

3.口の後遺障害

口の後遺障害には、「咀嚼(そしゃく)機能の障害」、「言語機能の障害」、「歯牙障害」があります。
「嚥下障害」、「味覚障害」についても、障害等級表には定められていませんが、障害の程度に応じて、障害等級表に掲げられている他の障害に準じて等級認定されます。

(1)咀嚼機能障害、言語機能障害

第1級2号咀嚼及び言語の機能を廃したもの
第1級2号咀嚼または言語の機能を廃したもの
第4級2号咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
第6級2号咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの
第9級6号咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
第10級2号咀嚼または言語の機能に障害を残すもの

(2)歯牙障害

第10級4号14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
第11級4号10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
第12級3号7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
第13級5号5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
第14級2号3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

(3)その他の後遺障害

(ア)嚥下障害

第3級(準用)嚥下の機能を廃したもの
第6級(準用)嚥下の機能に著しい障害を残すもの
第10級(準用)嚥下の機能に障害を残すもの

 (イ)味覚障害

第12級(準用)味覚脱失
第14級(準用)味覚減退

 (ウ)その他

第12級(準用)声帯麻痺による著しい「かすれ声」
第12級(準用)咀嚼に相当時間を要する場合

4.鼻の後遺障害

鼻の後遺障害には、鼻の欠損に伴う機能障害と、鼻の欠損を伴わないが嗅覚が鈍くなったり、鼻呼吸がしづらくなる障害の、2種類あります。鼻の欠損を伴わない機能障害には直接規定がないので障害等級が準用されます。

(1)欠損に伴う機能障害

第9級の5 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

(2)欠損を伴わない機能障害

第12級の12(準用)嗅覚脱失又は鼻呼吸困難
第14級の9(準用)嗅覚の減退

5.耳の後遺障害

耳の後遺障害には、聴力障害、欠損障害、その他の障害(耳漏れや耳鳴り)の3種類があります。

(1)聴力障害

両耳について

第4級の3両耳の聴力を全く失ったもの
第6級の3両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
第6級の3の21耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第7級の2両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第7級の2の21耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第9級の6の2両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
第9級の6の3 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
第10級の3の2両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
第11級の3の3両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

片耳について

第9級の7一耳の聴力を全く失ったもの
第10級の4一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
第11級の4一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第14級の2の2一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

 (2)欠損障害

第12級の41耳の耳かくの大部分を欠損したもの

(3)耳漏と耳鳴り

直接規定はないものの、症状に応じて以下のように障害認定が準用されます。

(ア)耳漏

第12級常時耳漏があるもの
第14級常時ではないが、耳漏があるもの

 (イ)耳鳴り

第12級難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できるもの
第14級難聴に伴い常時耳鳴りがあることが合理的に説明できるもの

6.せき柱の後遺障害

せき柱の後遺障害には、「変形障害」、「運動障害」、「荷重機能(支持機能)障害」があります。

(1)変形障害

第6級5号せき柱に著しい変形を残すもの
第8級相当せき柱に中程度の変形を残すもの
第11級7号せき柱に変形を残すもの

(2) 運動障害

第6級5号せき柱に著しい運動障害を残すもの
第8級2号せき柱に運動障害を残すもの

 (3)荷重機能障害

第6級相当その原因が明らかに認められる場合であって、そのために頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの
第8級相当その原因が明らかに認められる場合であって、頸部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの

7.その他体幹骨

その他体幹骨の後遺障害は、変形障害のみが定められています。

第12級5号鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

8.胸腹部臓器の後遺障害

胸腹部臓器の後遺障害には、①呼吸器の障害、②循環器の障害、③腹部臓器の障害、④泌尿器の障害、⑤生殖器の障害があります。

上半身に関する後遺障害としては、 ①呼吸器の障害、②循環器の障害、③腹部臓器の障害が該当し、④泌尿器の障害、⑤生殖器の障害は下半身に関する後遺障害となります。

第1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第3級4号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
第5級3号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第7級5号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第9級11号胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
第11級10号胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第13級11号胸腹部臓器に障害を残すもの

9.上肢の後遺障害

上肢の後遺障害には、欠損障害、機能障害、変形障害の3つの種類があります。

(1)欠損障害

第1級3号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
第2級3号両上肢を手関節以上で失ったもの
第4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの
第5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの

(2)機能障害

第1級4号両上肢の用を全廃したもの
第5級6号1上肢の用を全廃したもの
第6級6号1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
第8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
第10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

  (3)変形障害

第7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
第8級8号1上肢に偽関節を残すもの
第12級8号長管骨に変形を残すもの

10.手指の後遺障害

手指の後遺障害には、欠損障害、機能障害の2つの種類があります。

(1)欠損障害

第3級5号両手の手指の全部を失ったもの
第6級8号1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
第7級6号1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
第8級3号1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
第9級12号1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
第11級8号1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
第12級9号1手のこ指を失ったもの
第13級7号1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
第14級6号1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

(2)機能障害

第4級6号両手の手指の全部の用を廃したもの
第7級7号1手の5の手指またはおや指を含み4の手指の用を廃したもの
第8級4号1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
第9級13号1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
第10級7号1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
第12級10号1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
第13級6号1手のこ指の用を廃したもの
第14級7号1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの