労災でのせき柱(脊柱)の後遺障害

労災でのせき柱(脊柱)の後遺障害

せき柱(脊柱)とは、いわゆる背骨のことです。頭蓋骨から臀部までを貫く1本の骨のことをいい,せき椎と呼ばれる合計26個の骨が繋がってできています。

そして、せき椎は、場所に応じて,上から頸椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨と尾骨(それぞれ1個)との名称があります。

せき柱のうち、頸椎と胸腰椎とでは主たる機能が異なっています。すなわち、頸椎は主として頭部の支持機能を、胸腰椎は主として体幹の支持機能を担っています。

そこで、障害等級の認定にあたっては、原則として頸椎と胸腰椎は異なる部位として取り扱い、それぞれの部位ごとに等級を認定することになります。

せき柱(脊柱)の後遺障害の種類

せき柱の後遺障害には、「変形障害」、「運動障害」、「荷重機能(支持機能)障害」があります。

  • 変形障害とは、せき柱の変形に関する後遺障害で、圧迫骨折や破裂骨折、脱臼などが原因となります。
  • 運動障害とは、背骨を曲げにくくなったなど、せき柱の動きが悪化した後遺障害です。
  • 荷重障害とは、せき柱が体を支えられなくなった後遺障害で、運動障害の等級が準用されます。

1.変形障害

第6級5号せき柱に著しい変形を残すもの
第8級相当せき柱に中程度の変形を残すもの
第11級7号せき柱に変形を残すもの

「せき柱に著しい変形を残すもの」及び「せき柱に中程度の変形を残すもの」は、せき柱の後彎(こうわん)または側彎(そくわん)の程度等により等級を認定します。

「後彎」とは、せき柱の背中側(後方)へのカーブが異常に大きくなっている状態を指し,「側彎」とは、せき柱が横(側方)に曲がっている状態をいいます。

そして、せき柱の後彎の程度は、せき椎圧迫骨折、脱臼等により前方椎体高が減少した場合に、減少した前方椎体高と当該椎体の後方椎体高の高さを比較することにより判定します。また、せき柱の側彎は、「コブ法」という側彎度で判定します。

「コブ法」とは、エックス線写真により、せき柱のカーブの頭側及び尾側においてそれぞれ水平面から最も傾いているせき椎を求め、頭角で最も傾いているせき椎の椎体上縁の延長線と尾側で最も傾いているせき椎の椎体の下縁の延長線が交わる角度(側彎度)を測定する方法です。

(1)「せき柱に著しい変形を残すもの」とは

エックス線写真、CT画像またはMRI画像により、せき椎圧迫骨折や脱臼などを確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • せき椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの。この場合「前方椎体高が著しく減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さ以上であるものをいいます。
  • せき椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの。この場合「前方椎体高が減少」したとは、減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるものをいいます。

(2)「せき柱に中程度の変形を残すもの」とは

エックス線写真等によりせき椎圧迫骨折や脱臼などを確認することができる場合であって、次のいずれかに該当するものをいいます。

  • 上記(1)の②に該当する後彎が生じているもの
  • コブ法による側彎度が50度以上であるもの
  • 環椎(第1頸椎)または軸椎(第2頸椎)の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により、次のいずれかに該当するもの。
    ・60度以上の回旋位となっているもの
    ・50度以上の屈曲または60度以上の伸展位となっているもの
    ・側屈位となっており、エックス線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの

(3)「せき柱に変形を残すもの」とは

  • せき椎圧迫骨折や脱臼などを残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • せき椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかのせき椎に吸収されたものを除く)
  • 3個以上のせき椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

2. 運動障害

第6級5号せき柱に著しい運動障害を残すもの
第8級2号せき柱に運動障害を残すもの

エックス線写真等では、せき椎圧迫骨折またはせき椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的変化も認められず、単に、疼痛のために運動障害を残すものは、局部の神経症状として等級を認定します。

(1)「せき柱に著しい運動障害を残すもの」とは

次のいずれかにより頸部及び胸腰部が強直したものをいいます。

  • 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに、せき椎圧迫骨折等が存しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • 頸椎及び胸腰椎のそれぞれにせき椎固定術が行われたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

なお、関節の「強直」とは、関節の完全強直またはこれに近い状態にあるものをいいます。「これに近い状態」とは、せき柱においては、主要運動のすべてが、考可動域角度との比較で10%程度以下に制限されているものをいいます。

(2)「せき柱に運動障害を残すもの」とは

次のいずれかにより、頸部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの

  • 頸椎または胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • 頸椎または胸腰椎にせき椎固定術が行われたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
  • 頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの

3.荷重機能障害

第6級相当その原因が明らかに認められる場合であって、そのために頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの
第8級相当その原因が明らかに認められる場合であって、頸部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの

「その原因が明らかに認められる場合」とは、脊柱圧迫骨折・脱臼、脊柱を支える筋肉の麻痺または項腰背部軟部組織の明らかな器質的変化が存在し、それがエックス線写真等により確認できる場合です。

せき柱(脊柱)の後遺症まとめ

せき柱に関する後遺障害の認定に際しては、どのような症状を診断してもらい労災を申請するか、労災申請の書き方によって等級が大きく異なります。障害を負った本人やその家族の方が様々な手続きを全て行うのは相当の時間と労力が必要です。

労災を多く取り扱ってきた法律事務所テオリアでは、適切な書類の書き方はもちろん、受診する際のポイント等をお教えいたしますし、会社との交渉、場合によっては訴訟まで、あらゆる法的手続きを行うことが可能です。申請後の見通しについても、予想される等級と、受給できる金額、弁護士費用について、受任前に詳細にご説明します。せき柱の後遺障害を疑われる方やご家族の方、ぜひお気軽にご相談ください。


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