会社の業務中、もしくは通勤中に発生したケガや病気は「労働災害(労災)」と呼ばれます。そして労災によるケガや病気で休業を余儀なくされた場合には、「労働者災害補償保険(労災保険)」による一定の休業補償が受けられます。
では、労災にあった場合の休業補償とは、どのような内容なのでしょうか。
この記事では、労災の休業補償について、詳しくご説明します。

労災の休業補償とは?

労災と労災保険

従業員が業務中や通勤中に事故にあったり、業務を起因とする病気になったりすることを労災と言い、労災による通院や休業中の収入は、労災保険により補償されています。
この労災保険とは、従業員を雇う事業主に義務付けられている保険で、事業主が加入し、保険料を全額納付しているものです。
また、労災保険の対象となるのは、すべての従業員です。正社員はもちろん、パートやアルバイト、日雇いであっても、雇用形態に関わらず、労災発生時には労災保険が適用されます。

労災保険の休業補償

労災保険の補償の中には、「休業補償」が設けられています。労災保険の休業補償とは、労災によるケガや病気により休職した場合に給付される補償のことです。さらに、休業補償は大きく「休業補償給付」と「休業給付」の2種に分けられます。そしてそれに加え、「休業特別支給金」の給付も受けられます。

休業補償給付
業務中に発生した労災(業務災害)による休職に対し、給付される補償
休業給付
通勤中に発生した労災による休職(通勤災害)に対し、給付される補償
休業特別支給金
「休業補償給付」または「休業給付」に加えて給付される特別給付。保険としての給付ではなく、労働福祉事業として給付される。

労災により休職する場合、最初の3日間は待機期間とされ、労災保険による補償給付はありません。しかし、この3日間については、事業主から補償金を出すことが、労基法第76条により義務付けられています。その金額は1日につき平均賃金の6割とされていますが、多くの会社では満額補償を行なっているようです。
ただし、待機期間の賃金補償が義務付けられているのは「業務災害」の場合のみ。「通勤災害」の場合には、このような義務は課せられていないので、注意しましょう。

休業補償給付の支給条件とは

次に、休業補償給付金の支給条件について見ていきましょう。休業補償を受けるには、どのような条件を満たしていれば良いのでしょうか。

まず、労災保険の休業補償対象になるのは、「業務災害または通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき」 (厚生労働省HP 労災保険給付等一覧より https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12-04.pdf)とされています。

そして、実際に休業補償給付を受けるためには、以下の3つの条件を満たしておかなければなりません。

休業補償給付の条件1:仕事に従事できない状態であること

労災による休業補償は、仕事ができない程度のケガや病気であり、休職することがやむを得ない場合のみに、適用されます。
ケガや病気などであっても症状が軽く、働ける状態にあるのであれば、休業補償の給付対象にはなりません。

休業補償給付の条件2:労災によるケガや病気の療養中であること

休業補償の給付を受けられるのは、労災によるケガや病気の療養中のみです。当然、完治していれば給付を受けることはできません。
療養中であることの証明には、医師による診断書の提出が必要になることが多いため、病院にかかる際には診断書を受け取るようにしましょう。

休業補償給付の条件3:会社から賃金を受けていないこと

基本的に、休業補償の対象は、休業中に会社から賃金を受け取っていない人とされています。会社から賃金として、平均賃金の6割以上を受け取っている場合は、給付の対象外です。
ただし、会社からの補償金はこの条件にはあたりません。

休業補償給付を受けるためにこれらの条件を満たしていることは必須です。そのため、休業補償を受けている時に、医師から就業可能と判断された場合には、休業補償の給付は打ち切りになります。
また、休業補償給付の条件を満たしているかどうかは、労働局・労働基準監督署により決定されます。

休業補償はいつまでもらえるのか

次に、休業補償の給付期間についてご説明しましょう。労災によるケガや病気で働けなくなった場合、休業補償給付はいつまで受給できるのでしょうか。
休業補償の給付期間は、「休業4日目から休業補償の給付条件を満たす期間中」です。
つまり、労災により休職し、待機期間である3日間を経過した4日目から、前章でご紹介した「仕事に従事できない状態であること」「労災によるケガや病気の療養中であること」「会社から賃金を受けていないこと」という3条件を満たしている間は、休業補償が給付されるのです。
ただし、休職後4日目からの給付といっても、実際に給付金が振り込まれるまでには、1ヶ月ほどかかるので注意しましょう。
また、療養を開始してから1年6ヶ月が経過しても、労災によるケガや病気が治癒しておらず、傷病等級に該当するレベルの障害が残った場合には、休業補償給付の代わりに、傷病補償年金(業務災害の場合)または傷病年金(通勤災害の場合) が支給されるようになります。
傷病等級については、厚生労働省ホームページの傷病等級表をご確認ください。
(厚生労働省 傷病(補償)年金についてhttps://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-13-04.pdf)

休業補償の計算方法は?

休業補償について、その金額について知りたいという方も多いでしょう。労災による休業補償の給付金は、いくら位もらえるのでしょうか。ここからは、休業補償給付金の計算方法をご紹介します。

休業による給付金は給付基礎日額の8割

まずは、給付基礎日額について知っておきましょう。給付基礎日額は以下のような数字を指します。

給付基礎日額とは
給付基礎日額は、「直近3ヶ月に支払われた賃金÷歴日数」で算出される額。賞与などの臨時的な賃金は含みません。

これを踏まえ、休業補償給付金の額は「休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額」とされています。
そしてさらに、休業特別支給金として「休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額」も追加支給されます。
(厚生労働省HP 労災保険給付等一覧より https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12-04.pdf))
つまり、休業補償給付金と休業特別支給金を合わせると、労災による休業では、給付基礎日額の80% の給付が受けられるのです。

「月収30万円で5月から休職した場合」の給付例

では、実際に例を挙げて休業補償の計算をしてみましょう。
今回は、条件を「月収30万円で5月から休職した場合」とします。

給付基礎日額の算出
(30万円×3ヶ月)÷90日間(2月は29日+3月は31日+4月は30日)=1万円

休業補償給付金の算出
1万円(給付基礎日額)×60%=6,000円

休業特別支給金の算出
1万円(給付基礎日額)×20%=2,000円

支給総額
6,000円+2,000円=8,000円

この場合、労災による休職で受け取れる給付金の支給総額は、1日につき8,000円ということになります。給付基礎日額の算出で1円以下の端数が出た場合には、端数を1円として繰り上げ、計算するようにしましょう。

まとめ

ここまで、労災保険の休業補償についてご説明しました。
このように、休業補償については明確な規定が定められています。
しかし、万が一労災に遭った場合に、自分自身で休業補償の条件や期間、金額などを調べ判断するのは、不安ではないでしょうか。労災については複雑な部分も多く、一般の方では正確な判断がしにくい上、ケガや病気を負っている中では、それが身体の負担になってしまうかもしれません。
そのため、労災についての疑問や不安がある場合には、一度法律相談所へ相談してみましょう。弁護士による的確なアドバイスは、療養への専念、また不安の払拭にも役立ちます。一人で抱え込まず、法律のプロの手を借りるのも、問題を解決するための選択肢のひとつです。