労災の様式5号は、どんな時に必要?入手先・提出先も解説

雇用されて働く労働者が、業務を起因として負った傷病を、労災といいます。労災の怪我や病気で療養や休業が必要になった場合には、補償として、労災保険から給付金が支給されます。

ただし、この給付金を受け取るには、請求手続きを行わなくてはなりません。この手続きに必要な用紙には多くの様式がありますが、そのひとつが様式5号です。

今回は、労災請求における様式5号について、使い方や書き方を詳しく解説します。

労災の様式5号は、どんな時に必要?

労災保険から補償を受け取るためには、まず労災請求の手続きを行わなくてはなりません。
この手続きでは、所定の用紙に必要事項を記入し、勤務先の事業所を管轄する労働基準監督署(もしくは受診した労災指定病院)へ提出する必要があります。

ここで気を付けておきたいのが、請求用紙の様式には多くの種類があるという点です。「どの給付金を請求するか」「業務災害なのか通勤災害なのか※」によって、使うべき用紙が異なります。
※業務災害・・・業務が原因の傷病のこと
※通勤災害・・・通勤中に負った傷病のこと

そのうちの様式5号とは、次のようなものを指します。

◆様式5号
業務災害に遭って労災指定病院を受診した後、労災保険の療養補償給付を請求する際に使用する請求用紙。
正式には、「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」という。

様式5号は、労災保険の療養補償給付を請求する時に使用する用紙です。
療養補償給付とは、労災による傷病の療養にかかるサービスの現物給付、または費用を補償する給付金のことです。医療機関での治療費や入院費、手術代、薬代等は、この給付金によって補償されます。

様式5号は業務災害で労災指定病院受診の場合のみ

療養補償給付の請求で様式5号を使用するケースは、次の2つの条件を満たす時に限ります。

①業務災害であること
②労災指定病院を受診したこと

様式5号は、業務災害で負った傷病に対する療養補償給付請求にあたって使用する用紙です。
また、この用紙を使うには、治療を受けるために労災指定病院を受診していなければなりません。業務災害ではなく通勤災害であったり、労災指定病院以外の医療機関を受診したりした場合には使用できないので注意してください。

様式16号の3との違い

様式5号の使用においては、様式16号の3との間違いが目立ちます。その違いについても確認しておきましょう。

◆様式16号の3
通勤災害に遭って労災指定病院を受診した後、労災保険の療養給付を請求する際に使用する請求用紙。
正式には、「療養給付たる療養の給付請求書 通勤(様式第16号の3)」という。

様式16号の3も、様式5号と同じく、療養のための給付金を請求するために使用する書類です。
その違いは、「業務災害なのか、通勤災害なのか」という点です。様式5号では業務災害が対象となるのに対し、様式16号の3では通勤災害が対象となります。

療養に関する給付金が、業務災害では「療養補償給付」、通勤災害では「療養給付」と呼ばれることも押さえておきましょう。

労災の様式5号の入手先

労災に遭って療養補償給付を請求する場合には、必ず様式5号の請求用紙を用意し、必要事項を記入しなければなりません。
では、この様式5号はどこで手に入れればよいのでしょうか。
その方法は次の2つです。

①労働基準監督署から入手
②厚生労働省のホームページから入手

労働基準監督署には、様式5号をはじめとした請求書類が備え付けてあります。近くに労基署がある場合は、直接書類をもらいに行くと良いでしょう。

これらの請求書類は厚生労働省のホームページ(厚生労働省 労災保険給付関係請求書等ダウンロード)から入手することもできます。
一度保存した後にAdobe Acrobat Reader DCから開けば、テンプレートに直接入力することも可能です。効率的に書類を作成できます。

ただし、出力にあたっては次の条件を満たす必要があります。

・一般的に「コピー用紙」「普通紙」「PPC用紙」等として販売されているもの
・サイズ:A4サイズ
・厚み:坪量67g/m²程度
・白色度:80%以上
・汚れ、曲がり、濡れ、破損、変色等がないこと

条件を満たす書類でなければ受理されないので、出力の際にはよく確認するようにしましょう。

詳しくは、厚生労働省 労災保険給付関係請求書等ダウンロード『注意事項』『〈直接入力可〉の様式で入力を行う場合の方法』をご確認ください。

労災の様式5号は、誰が書く?

労災の様式5号は、基本的に被災労働者本人が記入することになっています。
とはいえ、会社側には、雇用する労働者が速やかに労災の手続きをできるようサポートする義務があるため、様式5号への記入を含めた手続き全般を会社側が行うケースも珍しくはありません。
会社によって対応は異なるので、確認しておくと良いでしょう。

また、様式5号には事業主証明欄があります。この欄は、会社側に記入してもらわなければなりません。
自身で書類を作成する場合には、必要事項を記入後、事業主に証明欄を記入してもらってから、受診した労災指定病院へその書類を提出するようにしてください。

労災の様式5号の書き方・記入例

様式5号の書類作成にあたっては、労働者本人は次の項目を記入します。

・労働保険番号
・性別・生年月日
・負傷又は発病年月日
・氏名・住所・職種
・負傷又は発病時刻
・災害発生の事実を確認した者の職名・氏名
・災害の原因及び発生状況
・指定病院等の名称・所在地
・傷病の部位及び状態
・事業の名称・事業場の所在地・事業主の氏名
・所属事業場の名称・所在地
・請求人の住所・氏名
・その他就業先の有無

様式5号に記入する際には、事実を正確に記入することが大切です。間違えがないよう、よく見直すようにしてください。

詳しい記入方法や記入例については、厚生労働省『療養(補償)等給付の請求手続』をご確認ください。

事業主に証明欄を書いてもらえない場合は?

先ほど少し触れたように、様式5号には事業主の証明欄があります。この欄は会社側に記入してもらわなければならない項目ですが、「会社が労災を使うことに反対している」「労災申請の手続きに協力してくれない」等の理由で、証明欄を書いてもらえないということもあるでしょう。

このような場合には、事業主の証明欄は空欄のまま提出し、提出時にその旨を伝えるようにしてください。この証明欄が空欄でも、受理はしてもらえます。
この場合、後日労働基準監督署が会社に対し「証明拒否理由書」を提出させ、その内容を調査することになります。

労災の様式5号の提出先

最後に、様式5号の提出先をもう一度確認しておきましょう。

様式5号の提出先は、受診した労災指定病院の窓口です。書類は、受け取った病院が管轄の労働基準監督署に提出してくれます。

ただし、労災指定病院以外の医療機関を受診した場合には使用する書類の様式が異なり、さらに提出先も異なります。間違えのないように気をつけましょう。

提出期限(時効)にも注意!

様式5号による給付金請求、つまり療養補償給付の請求については、事項が設定されています。

◆療養補償給付の時効
療養の費用を支出した日の翌日から2年
※療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生する

この時効は、様式16号の3(療養給付)の請求でも同様です。
様式5号による療養補償給付、また様式16号の3による療養給付を請求するための書類提出は、必ず時効までに余裕を持って行うようにしましょう。

まとめ

様式5号は、複数ある労災請求書類の中でも使用されることが多い書類です。「業務災害で労災指定病院を受診し、療養補償給付を請求する時に使う書類」だと覚えておいてください。
また、請求書類には似たような名前のものが多いので、書類をダウンロードしたり記入したりする前にはよく確認するようにしましょう。

本文でも触れたように、労災請求にあたっては、会社が協力的でなく証明欄を書いてもらえなかったり、会社に「労災を使うな」と言われたりするケースが見受けられます。労災保険の使用は労働者の権利であり、会社が制限するものではありません。労災に遭った労働者に会社が労災を使わせないことは、労災隠しという犯罪にもなり得ます。
このようなトラブルに巻き込まれた場合には、速やかに弁護士へ相談するようにしてください。