労災の申請に必要な書類|病院での治療や会社を休んだ場合に必要な様式を解説

業務中に怪我を負って労災保険の補償を受ける時には、被災労働者は労働基準監督署へ所定の書類を提出しなければなりません。
この書類は、どの給付金を申請するかによって様式や手続きの流れが異なります。万が一労災(労働災害)に遭った場合にスムーズな労災申請を行うには、書類や手続きの流れをしっかり押さえておくことが大切です。

そこで今回は、労災の申請に必要な書類と手続きの流れについて、代表的な労災給付である「療養(補償)給付」と「休業(補償)給付」を取り上げて詳しく解説していきます。どんな場合にどの書類が必要なのか、確認していきましょう。

<ケガをして治療した場合>療養給付申請の流れ

療養(補償)給付は、治療や投薬など、労災による傷病の療養費用を補償する労災給付の一種です。
療養(補償)給付の申請手続きは、「労災指定病院を受診するか」「労災指定病院以外の医療機関を受診するか」によって、手続きの流れが異なります。順に見ていきましょう。

①「労災指定病院を受診した場合」の療養給付申請の流れ

医療機関には、「労災指定病院」と「労災指定病院ではない医療機関」があります。「労災指定病院を受診した場合」の療養(補償)給付申請の流れは下記の通りです。

◆ 労災指定病院を受診した場合
1.会社に労災による傷病を負ったことを知らせ、速やかに労災指定病院で診療・治療を受ける。この時、窓口で労災の旨を伝えれば、無料で治療や投薬を受けられる。健康保険証は使用しない。
2.「療養の給付請求書」を用意し、必要事項を記入する。
3.「療養の給付請求書」の事業主証明欄に、事業主の証明を受ける。(受けられない場合は空欄にし、提出時にその旨を伝える。)
4.診療・治療を受けた労災指定病院の窓口に、記入した「療養の給付請求書」を提出する。
5.医療機関が労働基準監督署へ「療養の給付請求書」を提出する。労働基準監督署は労災が起こった状況の調査を行い、後日労災認定可否の決定を行う。
6.労災認定されれば通知が届き、受診した労災指定病院に労災保険から治療費等が支払われる。

②「労災指定病院以外の医療機関を受診した場合」の療養給付申請の流れ

「労災指定病院以外の医療機関を受診した場合」の療養(補償)給付申請の流れは下記の通りです。

◆ 労災指定病院以外の医療機関を受診した場合
1.会社に労災による傷病を負ったことを知らせ、速やかに労災指定病院で診療・治療を受ける。この時、被災労働者は治療や投薬にかかった費用を一旦全額立て替える必要がある。健康保険証は使用しない。
2.「療養の費用請求書」を用意し、必要事項を記入する。
3.「療養の費用請求書」の事業主証明欄に、事業主の証明を受ける。(受けられない場合は空欄にし、提出時にその旨を伝える。)
4.「療養の費用請求書」の医療機関正面欄に、診療・治療を受けた医療機関の証明を受ける。
5.労働基準監督署へ「療養の費用給付請求書」を提出。労働基準監督署は労災が起こった状況の調査を行い、後日労災認定可否の決定を行う。
6.労災認定されれば通知が届き、後日指定した被災労働者の口座に立て替えた治療費が返金される。

このように、「労災指定病院を受診するか」「労災指定病院以外の医療機関を受診するか」によって、請求書の種類や提出先は異なります。

また、労災指定病院を受診した場合は医療行為の現物給付という形で、労災指定病院以外の医療機関を受診した場合は医療行為にかかった実費の返金という形で、労災給付が行われます。

<ケガをして治療した場合>療養給付の申請に必要な書類

傷病の治療や投薬等の医療行為、およびそれらにかかった費用を補償する療養(補償)給付の申請時に必要な書類について解説していきます。

労災指定病院を受診した場合に必要な書類

労災指定病院を受診した場合の療養給付の申請に必要な書類は、「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」です。

労災指定病院を受診した場合 業務災害 療養補償給付たる療養の給付請求書様式第5号
通勤災害 療養給付たる療養の給付請求書様式第16号の3

上記のように、業務災害か通勤災害かによって使用する請求書の様式は異なります。

労災指定病院以外を受診した場合に必要な書類

労災指定病院を受診した場合の療養補償給付の申請に必要な書類は、「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」で、業務災害か通勤災害かによって、また受けた手当の種類によって、様式が下記のように異なります。

労災指定病院以外を受診した場合 業務災害 療養補償給付たる療養の費用請求書様式第7号
通勤災害 療養給付たる療養の費用請求書第16号の5

看護・移送に要して費用があれば明細書と請求書(領収書)

薬局から薬剤の支給を受けた場合 業務災害 療養補償給付たる療養の費用請求書様式第7号(2)
通勤災害 療養給付たる療養の費用請求書第16号の5(2)
柔道整復師の手当を受けた場合 業務災害 療養補償給付たる療養の費用請求書様式第7号(3)
通勤災害 療養給付たる療養の費用請求書第16号の5(3)
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の手当を受けた場合 業務災害 療養補償給付たる療養の費用請求書様式第7号(4)
通勤災害 ・療養給付たる療養の費用請求書第16号の5(4)

・マッサージを受けた場合:初療の日、初療から6ヶ月経過した日、それ以降3ヶ月ごとの請求書に医師の診断書を添付

・はり、きゅうを受けた場合:初療の日、初療から6ヶ月経過した日の請求書に医師の診断書を添付

また初療から9ヶ月を経過する場合ははり師やきゅう師の意見書、症状経過表、医師の診断書、意見書を添付

訪問看護事業者から訪問看護を受けた場合 業務災害 療養補償給付たる療養の費用請求書様式第7号(5)
通勤災害 療養給付たる療養の費用請求書第16号の5(5)

請求書以外の添付書類が必要になる場合もあるので、提出時にはよく確認しておきましょう。

<ケガや病気で会社を休んだ場合>休業給付申請の流れ

休業(補償)給付は、労災による傷病で休業を余儀なくされた場合に支払われる給付で、休業4日目からが補償対象となります。
休業(補償)給付申請の流れを見ていきましょう。

◆ 休業(補償)給付申請の流れ
1.「休業(補償)給付支給請求書」を用意し、必要事項を記入する。
2. 「休業(補償)給付支給請求書」の事業主証明欄に、事業主の証明を受ける。(受けられない場合は空欄にし、提出時にその旨を伝える。)
3.労働基準監督署へ「休業(補償)給付支給請求書」を提出する。労働基準監督署は労災が起こった状況の調査を行い、後日労災認定可否の決定を行う。
4.労災認定されれば通知が届き、後日休業(補償)給付の支給が開始される。

<ケガや病気で会社を休んだ場合>休業給付の申請に必要な書類

休業(補償)給付の申請に必要な書類は、「休業(補償)給付支給請求書」で、業務災害か通勤災害かによって、様式が下記のように異なります。

休業(補償)給付を申請する場合 業務災害 休業補償給付支給請求書様式第8号
通勤災害 休業給付支給請求書様式第16号の6
同一の事由によって障害厚生年金、障害基礎年金等の支給を受けている場合 支給額を証明する書類
賃金を受けなかった日のうち、労災による療養のため、所定労働時間の一部について休業した日が含まれる場合 業務災害 様式第8号の別紙2
通勤災害 様式第16号の6の別紙2
複数事業労働者の場合 業務災害 休業補償給付支給請求書様式第8号で記入した事業場以外の事業場についての別紙1〜3
通勤災害 休業補償給付支給請求書様式第16号の6で記入した事業場以外の事業場についての別紙1〜3

他にも、必要に応じて他の書類の提出が求められる可能性もあります。

労災申請に必要な書類の入手方法

前述の書類をはじめとした、労災申請時に必要な請求書は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。また、労働基準監督署でも入手することが可能です。

記入した書類の提出先は、事業所を管轄する労働基準監督署です。ただし、労災指定病院を受診した場合の「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」については、受診した病院が提出先となるので注意しましょう。

労災申請の書類は誰が書く

労災申請は被災労働者が書類を用意・記入し提出することになっています。しかし、被災労働者の負担軽減のため、事業主側が手続きを代理で行っているケースも少なくはありません。
労災に遭った場合は、手続きは事業主側で行ってもらえるのか、自身で行う必要があるのか、会社に確認するようにしてください。

まとめ

ご紹介したように、労災申請の手続きは事業主側で行ってもらえるケースが一般的です。しかし、事業主や会社が手続きを行ってくれなかったり、労災申請に消極的であったりすることもあるでしょう。このような場合には、被災労働者は自身で労災申請の手続きを行わなければなりません。
申請する給付の種類や傷病の状態によって用意する書類や添付書類は異なります。スムーズに手続きを進め、療養に専念できるよう、申請手続きの前には必要書類をしっかりと確認しておきましょう。

また、事業主や会社の労災隠しなど、労災申請にあたってトラブルに巻き込まれた場合には、弁護士にご相談ください。弁護士のサポートがあれば、事業主や会社に然るべき対応を求めるとともに、スムーズな労災申請を目指すことが可能です。
事業主や会社が労災を認めないからといって、労災申請をあきらめるようなことのないようにしてください。