労災申請に診断書は必要?費用負担についても解説

労災保険の給付金請求にあたっては、医師の診断書や証明が必要になる場合があります。

診断書発行や証明記入には費用がかかりますが、この費用は誰が負担するのでしょうか。また、診断書・証明が必要になるのはどんなケースなのでしょうか。

今回は、労災保険の給付金請求手続きに必要な医師の診断書・証明について、必要なケースや費用負担、作成期間など詳しくご紹介します。

申請時に診断書や証明が必要な労災の給付は?

労災給付の中には、申請時に、医師による診断書もしくは証明が必要になるものがあります。
どの労災給付に診断書や証明が必要なのかご説明しましょう。

労災給付の種類

まずは、労災給付にはどのような種類があるのか見ていきます。
労災給付の種類は、以下の8つに分けられます。

給付の種類 内容
療養(補償)給付 労災による傷病の治療費に対する補償
休業(補償)給付 労災による休職に対し給付される補償
傷病(補償)年金給付 療養開始後1年6か月経過しても治らず、その程度が傷病等級に該当する、労災による傷病に対する補償
障害(補償)給付 労災による傷病で残った障害に対する補償
遺族(補償)給付 労災により亡くなった労働者の遺族に対する補償
葬祭料・葬祭給付 労災により亡くなった労働者の葬祭の補償
介護(補償)給付 労災による傷病により介護を必要とする労働者への補償
二次健康診断等給付金 二次健康診断を無料で受けられる制度

それぞれの労災給付には支給要件があります。
また、給付を受けるためには、請求者(労働者やその家族)は労災給付の種類に合った請求書を作成し、労働基準監督署に提出する必要があります。

医師の証明が必要な労災給付は2種

労災給付には上記の通り8つの種類がありますが、全ての給付金請求に医師による証明が必要なわけではありません。医師の証明が必要になるのは、以下の2種の給付金請求の場合のみです。

医師の証明が必要な労災給付
・療養(補償)給付
・休業(補償)給付

給付金請求の手続きにおいては、療養(補償)給付を請求する場合には「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を、休業(補償)給付を請求する場合には「休業(補償)給付支給請求書」を労働基準監督署に提出することになります。
「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」「休業(補償)給付支給請求書」には、医師による証明欄があります。書類提出の前に、必ず診療を受けた医師に証明欄を記入してもらうようにしましょう。

ただし、労災指定病院で治療を受けた場合、医師の証明は不要です。請求書類にも、医師証明欄はありません。

医師の診断書が必要な労災給付は4種

労災給付の中には、請求時に医師の診断書が必要なものもあります。

医師の診断書が必要な労災給付
・傷病(補償)年金給付
・障害(補償)給付
・介護(補償)給付
・マッサージ、はり、灸の治療を受けた場合の療養(補償)給付

傷病(補償)年金給付を請求する場合には「傷病の状態等に関する届」、障害(補償)給付を請求する場合には「障害(補償)給付支給請求書」、介護(補償)給付を請求する場合には「介護(補償)給付支給請求書」などを労働基準監督署に提出します。これらの書類に医師の証明欄はありませんが、提出に際しては別途医師による診断書の添付が求められます。

また、療養(補償)給付を請求する場合でも、マッサージやはり、灸の治療を受けた場合には、医師の診断書とともに、はり師や灸師の意見書が必要になる場合もあります。

診断書や証明の費用は、誰が負担する?

医師に診断書を発行してもらったり証明欄を書いてもらったりするには、費用がかかります。労災給付の請求にあたって必要となるこの費用は、誰が負担するのでしょうか。

診断書や証明の費用は基本的に労災保険が負担

労災保険の指示によって提出を求められる医師の診断書や証明費用は、基本的に労災保険が負担します。
医師の診断書や証明にかかった費用は、一旦は労働者自身が病院に支払うことになります。しかし、後から請求手続きを行えば、労災保険から返金を受けられます。
労災保険への診断書・証明費用を請求する際には、「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を作成し、労働基準監督署へ提出しましょう。

また、医師の診断書・証明費用の労災保険負担上限は、以下のようになります。

・診断書費用の労災保険負担上限・・・4,000円
・証明費用の労災保険負担上限・・・2,000円

診断書・証明費用が労災保険の負担上限を超えた場合には、超過分は自己負担となるので注意しましょう。

一部自己負担が必要なケースも

労災給付請求にあたっての証明費用は、全額自己負担になるケースもあります。
それは、療養(補償)給付を請求する場合です。
療養(補償)給付の請求書(療養(補償)給付たる療養の費用請求書)には、医師の証明欄があり、医師に記入してもらう必要があります。この証明記入には費用が必要になりますが、療養(補償)給付の請求書における医師の証明費用については、労災保険に負担の旨が定められていません。
そのため、基本的には労働者自身が証明費用を自己負担することになります。

ただし、労災指定病院で治療を受けた場合には、病院側負担で証明欄記入を行ってくれるケースが多くなっています。
一方、労災指定以外の病院では証明費用を請求されるケースがあり、その支払いは自己負担となります。

診断書の作成に必要な期間

医師による診断書は、依頼してすぐに作成してもらえるものではありません。病院やその時の状況によっては即日発行してもらえる場合もありますが、基本的に診断書の作成には2〜3週間かかります。
また、障害(補償)給付請求のための後遺障害に関する診断書の場合には、さらに作成時間がかかることもあります。

診断書の作成期間は、労災給付請求手続きのスケジュールを左右します。よって、おおよその作成期間については、医師への依頼時に確認しておきましょう。

労災の基準を満たす診断書ではなかった場合

医師に診断書を作成してもらっても、その内容が労災の基準を満たさず、労災認定されないことがあります。
診断書の内容に納得がいかない場合の対処としては、セカンドオピニオンを受けるという方法があります。

セカンドオピニオンとは、最初に診断を受けた医師とは別の医師に、第二の意見として診断を受けること。
医師によって傷病の状態に対する判断は異なる可能性があります。そのため、セカンドオピニオンで別の医師の診断を受けることで、最初とは違った内容の診断書を書いてもらえるかもしれません。

また、後遺障害関連の労災認定では、診断書の内容が重要視され、診断書の書き方によって障害・傷病等級が変わることもあります。そのため、後遺障害の診断書は、できるだけ労災における後遺障害の診断書作成の経験豊富な医師に依頼した方が良いでしょう。

まとめ

労災給付の請求にあたっての医師の診断書・証明費用は、一部を除き、労災保険負担となります。きちんと労災保険への費用請求手続きを行わなければ返金は受けられないので、手続きを失念しないよう注意しましょう。

また、労災については、「会社が労災を認めない」「診断書の内容に納得できない」などのトラブルが発生しやすい傾向にあります。このようなトラブルによりうまく労災給付請求の手続きが進まない場合には、弁護士に相談することも検討しましょう。
労災案件の経験豊富な弁護士の手を借りれば、労働者やその家族に有利な労災トラブル解決を目指せます。初回相談無料の弁護士事務所も多いので、まずは無料相談を利用してみると良いでしょう。