労災申請の必要書類を解説|給付ごとに必要な様式と添付書類

会社に雇用されて働く労働者が、業務や通勤が原因で怪我や病気を負うことを、労災と呼びます。
労災に遭った場合、その労働者は労災保険からの補償を受けることができます。

ただし、補償を受けるには申請手続きが必要で、補償の種類によって使う書類は異なります。

そこで今回は、労災申請の必要書類を補償の種類ごとに解説していきます。

労災申請に必要な書類

労災保険の補償には、次の7種類の給付金があります。

● 療養(補償)給付
● 休業(補償)給付
● 傷病(補償)年金
● 障害(補償)給付
● 介護(補償)給付
● 遺族(補償)給付
● 葬祭料・葬祭給付

各給付の申請に必要な書類を見ていきましょう。

療養(補償)給付

療養(補償)給付は、労災による怪我や病気の療養にかかった費用を補償するものです。具体的には、病院での治療費や薬局での薬代、通院費などが対象となります。
この給付申請には、次の書類が必要です。

【労災指定病院を受診した場合】

業務災害 ●          療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
通勤災害 ●          療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)

(様式5号については、こちらで詳しく解説しています。「労災の様式5号は、どんな時に必要?入手先・提出先も解説」

【労災指定病院以外の医療機関を受診した場合】

業務災害 ●          療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(様式第7号)

●          看護や移送費用がかかった場合には明細書と請求書(領収書)

●          マッサージやはり・きゅうの施術を受けた場合は医師の診断書

通勤災害 ●          療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)

●          看護や移送費用がかかった場合には明細書と請求書(領収書)

●          マッサージやはり・きゅうの施術を受けた場合は医師の診断書

この給付申請で必要になるのは、基本的に請求書のみです。ただし、請求書への事業主の証明や医療機関の証明(指定病院以外の場合)は必要です。
また、様式第7号および16号の5を使用するケースにおいては、明細書や診断書が必要になることもあります。

(診断書については、こちらで詳しく解説しています。「労災申請に診断書は必要?費用負担についても解説」

受診した病院と労災の種類によって必要書類の様式が異なるので注意しましょう。

休業(補償)給付

休業(補償)給付は、労災で休業を余儀なくされた労働者に対する補償です。休業4日目から、給付基礎日額の80%(特別支給含む)が支給されます。
この給付申請には、次の書類が必要です。

業務災害 ●          休業補償給付支給請求書 複数事業労働者休業給付支給請求書(様式第8号)
通勤災害 ●          休業給付支給請求書 (様式第16号の6)

(様式8号については、こちらで詳しく解説しています。「労災の様式8号は、どんな時に必要?提出先、休業補償期間の書き方を解説」

これらの書類にも、事業主や医師の証明が必要です。
また、上記請求書に加え、下記のケースでは追加書類の添付が求められます。

● 同一事由で障害厚生年金や障害基礎年金等を受給している場合・・・支給額を証明できる書類
● 一部休業した日が含まれる場合・・・様式第8号または16号の6の別紙2
● 複数事業労働者の場合・・・請求書に記入した事業場以外についての別紙1〜3

傷病(補償)年金

傷病(補償)年金は、療養を開始してから1年6ヶ月経っても傷病が治癒せず、その状態が規定の傷病等級に当てはまる時に支給されるものです。
この給付は、労働基準監督署長の職権のもとで行われるため、申請手続きは不要です。
ただし次のタイミングでは、報告書の提出が求められます。

1年6ヶ月を経過しても傷病が治癒していない時 ●          傷病の状態等に関する報告書(様式第16号の2)※1ヶ月以内に提出
1年6ヶ月を経過しても傷病(補償)年金の支給要件を満たさない時 ●          傷病の状態等に関する報告書(様式第16号の11)※毎年1月分の休業補償請求時に提出

障害(補償)給付

障害(補償)給付は、労災による傷病が治癒した後に身体に障害が残り、その状態が規定の障害等級に当てはまる場合に支給されるものです。

この給付申請には、次の書類が必要です。

業務災害 ●          障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書(様式第10号)

●          診断書

●          レントゲン等の資料(必要な場合)

通勤災害 ●          障害給付支給請求書(様式第16号の7)

●          診断書

●          レントゲン等の資料(必要な場合)

また、次のケースでは下記書類の添付が求められます。

・同一事由で障害厚生年金や障害基礎年金等を受給している場合・・・支給額を証明できる書類
・年金の前払いを受ける場合・・・障害補償年金 障害年金 前払一時金請求書(年金申請様式第10号)
・遺族が障害(補償)等年金差額一時金を受け取る場合・・・障害(補償)等年金差額一時金支給請求書・障害特別年金差額一時金支給申請書(様式第37号の2)※戸籍謄本又は抄本等や死亡した労働者との関係を示す書類も必要

介護(補償)給付

介護(補償)給付は、障害(補償)年金または傷病(補償)年金受給者のうち、それぞれの等級が1級または2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」に当てはまる方が介護を受けている場合に支給されるものです。

この給付申請には、次の書類が必要です。

● 介護補償給付・複数事業労働者介護給付介護給付支給請求書(様式第16号の2の2)
● 診断書
● 費用を支出して介護を受けた日数とその額を証明する書類(※介護費用を支出した場合)

ただし、障害等級1級3号・4号、2級2号の2、2号の3に該当する方、傷病(補償)年金を受給している方については、診断書は必要ありません。

遺族(補償)給付

遺族(補償)給付とは、労災で亡くなった労働者の遺族に対する補償です。

この給付申請には、次の書類が必要です。

業務災害 ●          遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書(様式第12号)

●          被災労働者の死亡の事実と年月日を証明できる書類(死亡診断書、死体検案書等)

●          請求人や他の受給資格者と被災労働者の関係を証明できる書類(戸籍謄本、抄本等)

●          請求人や他の受給資格者が被災労働者の収入で生計を立てていたことを証明できる書類

通勤災害 ●          遺族年金支給請求書(様式第16号の8)

●          被災労働者の死亡の事実と年月日を証明できる書類(死亡診断書、死体検案書等)

●          請求人や他の受給資格者と被災労働者の関係を証明できる書類(戸籍謄本、抄本等)

●          請求人や他の受給資格者が被災労働者の収入で生計を立てていたことを証明できる書類

葬祭料・葬祭給付

葬祭料・葬祭給付は、被災労働者の葬祭費用を補償するものです。

この給付申請には、次の書類が必要です。

業務災害 ●          葬祭料・複数事業労働者葬祭給付請求書(様式第16号)

●          被災労働者の死亡の事実と年月日を証明できる書類(死亡診断書、死体検案書等)

通勤災害 ●          葬祭給付請求書(様式第16号の10)

●          被災労働者の死亡の事実と年月日を証明できる書類(死亡診断書、死体検案書等)

葬祭料・葬祭給付に申請では、被災労働者の死亡の事実と年月日を証明できる書類が必要になりますが、遺族(補償)給付の請求時にこの書類を提出している場合には用意は不要です。

労災申請書類の書き方

労災申請書類は、プリントアウトして手書きで記入することも、パソコンで直接入力することも可能です。後者の場合は、厚生労働省「〈直接入力可〉の様式で入力を行う場合の方法」を参考にしてください。

また、各書類の記入には特に難しい部分はありません。順に枠の中を埋めていく形になります。
厚生労働省のWebサイトには記入例が掲載されているので、これを見ながらであれば、スムーズに記入を進められるでしょう。

【療養(補償)給付】5号・16号の3・7号・16号の5の記入例

【休業(補償)給付】8号・16号の6の記入例

【障害(補償)給付】10号・16号の7の記入例

【介護(補償)給付】16号の2の2の記入例

【遺族(補償)給付】12号・16号の8の記入例

【葬祭料・葬祭給付】16号・16号の10の記入例

労災申請書類の提出先・提出期限

ご紹介した労災申請書類の提出先は、基本的には事業所を管轄する労働基準監督署です。
ただし、労災指定病院を受診した場合の療養(補償)給付の申請については、受診した労災指定病院に書類を提出しなければなりません。

また、各給付には提出期限、つまり時効が定められています。

● 療養(補償)給付・・・療養の費用を支出した日の翌日から2年
● 休業(補償)給付・・・賃金を受けない日ごとの翌日から2年
● 傷病(補償)年金・・・なし
● 障害(補償)給付・・・傷病が治癒した日の翌日から5年
● 介護(補償)給付・・・介護を受けた月の翌月の1日から2年
● 遺族(補償)給付・・・被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
● 葬祭料・葬祭給付・・・被災労働者が亡くなった日の翌日から2年

この期限を過ぎると請求はできなくなります。余裕を持って手続きを進めましょう。

労災の書類は誰が書く?

労災の書類は、原則労災被害に遭った労働者本人が書くことになっています。
しかし、会社には労働者の労災申請をサポートする義務が課せられていることから、会社が書類を作成してくれるケースも多いです。

会社によって対応は異なるため、労災申請時にはまず確認し、会社が手続きをしてくれない場合には労働者自身が書類を作成するようにしてください。
尚、今回ご紹介した書類は、全て厚生労働省「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」から手に入れることができます。

労災を申請する流れ

労災申請の流れを大まかに確認しておきましょう。

1. 書類作成・添付書類の準備
2. 事業主や医師の証明を得る(※必要な場合)
3. 事業場を管轄する労働基準監督署へ書類を提出
4. 労働基準監督署による調査
5. 労災認定・不認定(給付金の支給・不支給)の決定と通知
6. 給付金の振り込み(労災が認定された場合)

一般的な流れは上記の通りです。詳細は、こちらの記事で解説していますので、ご覧ください。「労災を申請する流れを徹底解説!病院受診から給付まで」

まとめ

ご紹介したように、労災申請に必要な書類の様式は、どの給付金を請求するかで異なります。中には、診断書やその他の資料の提出を求められるケースもあります。
給付金をスムーズに受け取るためには、申請手続きを正確に進めることが大切です。どの書類が必要かよく確認した上で、手続きを行うようにしてください。

また、労災トラブルに巻き込まれたり会社への損害賠償を検討したりしている場合には、まず弁護士にご相談ください。法律の専門家である弁護士の手を借りることで、トラブルの早期解決やスムーズな損害賠償請求が可能になります。