無免許でもフォークリフトの事故は労災認定される?

無免許でもフォークリフトの事故は労災認定される?

建設現場や倉庫での業務では、重い荷物を運ぶためにフォークリフトを使用することがあります。

フォークリフトを運転するには免許や講習の受講が必要ですが、中には無資格のままフォークリフトを操縦した労働者が、衝突や巻き込みなどの事故を起こし、怪我を負う・負わせるケースがあるようです。では、このような場合、労災認定は受けられるのでしょうか。

今回は、無免許でのフォークリフト操縦による事故が労災認定されるのかどうか、会社への損害賠償の可否も含め、わかりやすく解説します。

無免許のフォークリフト事故でも労災認定される?

無免許でフォークリフトを操作していて事故を起こし怪我を負った場合でも、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの条件を満たしてさえいれば、その怪我は基本的に労災認定の対象になります。

業務遂行性とは「事業主の支配・管理下における事故であること」を指し、業務起因性とは「業務が理由で起こった事故であること」を指します。この両方の条件が認められた場合、業務災害であるとして、労働基準監督署は労災認定を行います。

例えば、休憩中に事業場外に出て事故に遭った場合、それは事業主の支配・管理下における事故ではないため、業務遂行性は認められません。また、業務中・事業場内であっても、私的行為に起因して事故が起こった場合には、業務起因性は認められません。

個人的な怨恨により第三者から暴行を受けた場合も、業務起因性はないと判断されます。

「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの条件を満たしてさえいれば、その怪我は労災認定の対象になります。

ただし、労災保険法12条の2の2第2項には、故意や重大な過失により事故が発生したと判断される場合には、給付金の支給を制限することができる旨が定められています。

無免許でのフォークリフトの操縦が「重大な過失」と判断されるかどうかは、実際のところケースバイケースです。状況はもちろん、過去の判例ももとに判断する必要があるため、このような場合には弁護士に相談するようにしましょう。

そもそもフォークリフトに免許は必要か

フォークリフトの免許の要不要は、「最大荷重が1トン以上かどうか」によって異なります。

最大荷重1トン以上の場合は免許の取得が必要で、最大荷重1トン未満の場合は免許の代わりに特別教育の受講が必要になります。

また、最大荷重にかかわらず、フォークリフトで公道を走る場合には、免許が必要になります。

最大荷重1トン以上の場合

労働安全衛生法、また労働安全衛生法施行令には、以下の旨が示されています。

事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

(e-Gov法令検索 労働安全衛生法第61条

 

第一項の規定により当該業務につくことができる者は、当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない。

(e-Gov法令検索 労働安全衛生法第61条3項

 

法第六十一条第一項の政令で定める業務は、次のとおりとする。

最大荷重(フォークリフトの構造及び材料に応じて基準荷重中心に負荷させることができる最大の荷重をいう。)が一トン以上のフォークリフトの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務

(e-Gov法令検索 労働安全衛生法施行令第20条、11項

 

上記の法令にもとづき、最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転する場合には、労働者は運転技能講習を受講のうえ、免許を取得し携帯しなければなりません。

フォークリフト運転技能講習の概要は以下のとおりです。

  • 受講資格:満18歳以上
  • 受講時間:学科11時間、実技24時間(保有免許、業務経験によって異なる、修了試験あり)
  • 受講費用:4万円前後

最大荷重1トン未満の場合

最大荷重1トン未満のフォークリフトを運転する場合には、運転技能講習の受講による免許取得は必要ありません。ただし、以下の法律により、特別教育の受講が必要になります。

事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

(e-Gov法令検索 労働安全衛生法第59条3項

 

第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

最大荷重一トン未満のフォークリフトの運転(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第一号の道路(以下「道路」という。)上を走行させる運転を除く。)の業務

(e-Gov法令検索 労働安全衛生法規則第36条、5項

フォークリフトの特別教育の概要は以下のとおりです。

  • 受講資格:満18歳以上
  • 受講時間:学科6時間、実技6時間(修了試験なし)
  • 受講費用:15,000〜20,000円程度

公道を走る場合

フォークリフトで公道を走る場合には、最大荷重にかかわらず免許が必要になります。

必要な免許(小型特殊自動車に該当する場合)は、大型免許・中型免許・普通免許・大型特殊・大型自動二輪・普通自動二輪・小型特殊のいずれかです。

会社側へ損害賠償請求できるケース

業務中にフォークリフトによる労災事故に遭った場合、被災労働者は会社に対し損害賠償を請求できる可能性があります。

損害賠償は、相手側に不法行為や債務不履行があった場合に請求できるものです。フォークリフトによる労災事故の場合、会社には以下のような不法行為や債務不履行が認められる可能性があります。

①安全配慮義務違反

労働契約法では、使用者に対し、労働者が安全を確保しつつ労働できるよう配慮する義務(安全配慮義務)が定められています。これを怠った場合、使用者である会社は「安全配慮義務違反」に問われることになり、これは損害賠償請求の正当な根拠となります。

フォークリフトによる事故は、安全配慮義務違反につながる可能性があります。例えば、以下のような場合です。

  • 会社が、無免許とわかっていながらフォークリフトの運転を強制させていた
  • フォークリフトの運転にあたって必要な指導を、十分に行なっていなかった
  • フォークリフトや環境の点検・整備を怠っていた など

上記のような状況下での事故の場合、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性は高く、事故の被害者は会社に対し損害賠償を請求できると考えられます。

②使用者責任

民法では、被用者(雇用する労働者)が事業の執行にあたって第三者に損害を加えた場合、使用者がその賠償責任を負う旨が定められています。これを「使用者責任」といいます。

フォークリフトによる事故については、会社の使用者責任を問うことで、損害賠償を請求できる可能性もあります。

  • 他の従業員が運転していたフォークリフトに轢かれてケガを負った
  • 他の従業員によるフォークリフトの操縦ミスで、転倒・転落した など

上記のようなケースでは、会社が雇用する従業員の過失により、他の従業員が損害を受けています。ここには使用者責任が発生するため、被災従業員は会社に対して損害賠償を請求することができます。

③工作物責任

民法では、工作物の設置や保存の瑕疵によって他人に損害が生じたときには、その工作物の占有者が損害賠償責任を負う旨が定められています。これを「工作物責任」と呼びます。

フォークリフトによる事故については、会社の工作物責任を問えるケースも存在します。例を見てみましょう。

  • 作業場の棚が倒れたことで、運転していたフォークリフトごと下敷きになりケガを負った
  • 作業場にある大きな段差を通過した際にフォークリフトが倒れケガを負った など

上記のケースは、作業場内の工作物(棚、床の段差)の瑕疵が事故の原因です。この場合、会社に工作物責任を問うことで、被災労働者は損害賠償を請求できると考えられます。

このように、労災事故の損害賠償請求では、「会社側に不法行為や債務不履行が認められるか」が重要になります。

ただし、会社に不法行為や債務不履行が認められる場合であっても、労働者が無免許でフォークリフトを運転していた場合の事故については、無免許であったことが労働者側に不利な事情となり、損害賠償請求額が減額される場合があります。このような場合、「減額されるか」「金額はどのくらいか」判断するには法的な議論が必要ですので、まずは弁護士にご相談ください。

他の運転手(無免許)により事故に巻き込まれた場合は?

他の従業員が無免許で運転していたフォークリフトに巻き込まれケガを負った場合、この事故は労災(業務災害)に該当すると考えられます。したがって、被災労働者は労災申請を行い給付金を受け取ることが可能です。

また、前章でご説明した「使用者責任」の観点から見ると、会社への損害賠償請求も可能である場合があります。

労災保険と損害賠償から二重に同一の補償を得ることはできませんが、慰謝料など重複しない補償を得ることはできます(労災保険には慰謝料の補償なし)。ケースによりますが、負ったケガに対し十分な補償を得るためにも、労災保険と損害賠償の併用を検討していくべきです。

無免許だと労基に伝える際、警察に逮捕されない?

前述のとおり、フォークリフトの運転には免許または特別教育の受講が必要であると法律で定められています。つまり、無免許での運転は法律違反にあたります。

労災申請の過程で労働基準監督署に「無免許での運転であった」事実を伝えた場合、労働者が逮捕されるかどうかは断言できませんが、それよりもまず会社の対応が問題視されると考えられます。

従業員に無免許(無講習)で運転させていた会社の対応は、労働安全衛生法違反および安全配慮義務違反に該当するため、多くの場合、労基は調査に入り、会社に是正を求めるでしょう。

労災無料相談センターへお気軽にご相談を

労災事故は、専門的な判断が必要なケースが多いです。正しい判断によりしっかり補償を受けるためには、法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。

フォークリフトに関する事故に限らず、業務に関する事故でケガを負った場合には、労災無料相談センターへご相談ください。労働問題を数多く解決してきた弁護士が、労災申請をサポートすると同時に、損害賠償請求の可否についてもアドバイスを行います。

労働にまつわる様々な法律上の問題についてご相談いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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