労災保険・雇用保険とは? 知っておきたい労働保険の話

皆さんは、様々な保険の名称を耳にしたことがあると思います。その中でも、職場やニュースなどで雇用保険や労災保険、労働保険と言った言葉を聞いたことがあると思います。なんとなく知ってはいるけどよくわからない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、労働の場面で出てくる労働保険、労災保険、雇用保険について詳しく見ていきましょう。

まず、労働保険とは、労災保険と雇用保険とを総称した言葉です。
保険給付は両保険制度で別個に行われていますが、保険料の納付等については一体のものとして取り扱われています。労働者(パートタイマー、アルバイト含む)を一人でも雇用していれば業種・規模の如何を問わず労働保険の適用事業となりますので、事業主は加入し、労働保険料を納付しなければならないという点でも共通しています。

ですが、別の保険なので填補の対象とされる場面等も異なります。

労災保険とは

労災保険とは、労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気になったり、あるいは不幸にも死亡してしまった場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行うものです。
また、労働者の社会復帰等を図るための事業も行っています。

「労災」とは労働災害の略で、事業に関し労働者として働いたことが原因となり発生した災害を言います。労災は、事業に関し労働者として働いたことが原因となり発生した災害に対して保険が給付されるものなので、労働者が労働関係の下労働に従事している際に起きた災害でなければなりません(業務遂行性)。
さらに、労災として認定されるには、その災害が「仕事中の」ものでなければならず、仕事が原因となったということで、仕事と怪我との間に相当の因果関係がなければなりません(業務起因性)。
労災と認定されるには、このような業務起因性と業務遂行性という2つの要件が認められなければなりません。

そして、労災と認定されると、労災保険(労働者災害補償保険)に基づき様々な給付金が国から支給されます。具体的には、療養補償給付金(怪我の治療のために必要な病院代)、休業補償給付金(休業した期間の給料の約6割)休業特別支給金(休業した期間の給料の約2割)、障害補償給付金(月給の約302日分)、障害特別支給一時金(年間賞与の約302日分)、障害特別支給金(障害に応じた定額)です。
給付される金額については事案によって様々ですが、総額で数千万円になることもしばしば見られます。

雇用保険とは

雇用保険とは、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するため必要な給付を行うものです。

また、失業の予防、雇用構造の改善等を図るための事業も行っています。前身の失業保険が失業の事後的対応である失業手当金の給付に重点を置いていたのに対し、雇用保険ではこれに加えて、失業の予防、雇用構造の変動への対応に重点をおき、求職者給付、就職促進給付、雇用継続給付、教育訓練給付の4種の「失業等給付」を規定し、さらに「二事業」と呼ばれる雇用安定事業、能力開発事業を規定しています。さらに令和2年4月の改正法施行により「育児休業給付」の再編がされました。

労働者が雇用される事業は、「適用事業」となり、雇用保険に強制加入となります。国・地方公共団体が行う事業、法人が行う事業(法人の種類は問わない)、外国人事業主が日本国内で行う事業も労働者が雇用される事業に該当すれば適用事業となります。
ただし、農林水産業、個人経営であること、常時5人未満の労働者を使用することという三つの条件をすべて満たす場合は加入が任意となります。

また、適用事業に雇用される労働者であっても、1週間の所定労働時間が20時間未満である者や、継続して31日以上雇用されることが見込まれない者などは、例外として、保険者として認められないので注意が必要です。

1.失業等給付

失業等給付は、「求職者給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の4種類からなります。この給付を受けるためには、職業能力の開発及び向上を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行い、職業に就くよう努めなければなりません。

① 求職者給付

求職者給付とは、一般被保険者が失業した場合に支給されます。求職者が求職活動をする間の生活の安定を目的として支給され、「基本手当」「技能習得手当」「寄宿手当」「傷病手当」の4種類からなります。

②就職促進給付

就職促進給付は、失業者が再就職するのを援助・促進することを目的とする給付で、「就業促進手当」「移転費」「求職支援活動費」の3種類があります。

③教育訓練給付

教育訓練給付は、被保険者の主体的な能力開発の取組を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的として支給されます。

④雇用継続給付

雇用継続給付は、一般被保険者・高年齢被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に支給される給付で、「高年齢雇用継続給付」「介護休業給付」の2種類があります。

2.育児休業給付

2020年(令和2年)4月の改正法施行により、それまで「失業等給付」の体系の中のひとつであった「育児休業給付」が、子どもを養育するために休業した労働者の生活及び雇用の安定を図るための給付と位置付けられ、独立した給付の体系として整備されました。

このように、労災保険と雇用保険は労働保険ですが、給付の適用となる人や場面、給付の内容が異なります。事業主は、原則としてどちらにも加入していなければなりませんが、加入していなかったり労働者の申請について協力しなかったりなど、労働者に不利益になるケースは多々あります。法律事務所テオリアは、労災に関するトラブルだけでなく、雇用契約の終了に関するお困りごとなど、様々な場面での雇用契約に関する相談をお受けしています。会社の対応にお悩みの方は、是非法律事務所テオリアにご相談ください。