仕事中に怪我をした場合、労災認定がされれば様々な給付を受けることができますが、怪我や病気を治すために通院した場合、その通院に要した費用も支給される可能性があることをご存知でしょうか。
今回は、療養補償給付のうち、通院費について見ていきましょう。
療養補償給付のうち、「療養の費用の支給」には、治療費、入院料、移送費((通院費)など通常療養のために必要なものが含まれており、これは傷病が治癒(症状固定)するまで支給されます。
ただ、通院費は無制限に認められるものではなく、支給されるには以下の要件を満たす必要があります。
住居地または勤務地から、原則、片道2km以上の通院であって、次の1から3のいずれかに該当するもの
➀同一市町村内の適切な医療機関へ通院したとき
➁同一市町村内に適切な医療機関がないため、隣接する市町村内の医療機関へ通院したとき
➂同一市町村内および隣接する市町村内に適切な医療機関がないため、それらの市町村を超えた最寄りの医療機関へ通院したとき
以下、要件の文言について見ていきましょう。
片道2km以上の通院
一定程度以上の距離が必要ということになります。例えば、自宅から歩いて行けたり、自転車ですぐに行ける距離の病院であれば、通院費は出ません。
同一市町村内
地方にお住まいの方が、都市部の名医に診てもらいたいために新幹線や飛行機で遠方から通うような場合は、通院費用は支給されません。
適切な医療機関
労災の傷病の診療に適した医療機関を指すので、骨折なら整形外科、精神障害なら精神科・心療内科、頭をぶつけたら脳外科、歯を折ったのなら歯科を受診する必要があります。
これにより、労災により骨折したから整形外科に通うけど、同時期に風邪もひいていたから内科でも診てもらった場合に、内科へ通院した際の費用は請求できない仕組みとなっています。
交通手段
支給基準には書かれてはいないのですが「交通手段」についても支給される基準があります。
バス、地下鉄、電車などの「公共の交通手段」は通院費が支給されます。この場合、定められている運賃分が支給され、領収書は必要ではなく、移動した場所の記載と金額を申告すれば足ります。
自家用車の場合は、1kmあたり37円で計算された金額が支給されます。必ずしも自分で運転しなくても、家族の人に自家用車で病院まで送り迎えしてもらうような場合でも支給の対象になります。
他方、タクシーなどは原則、支給の対象にはなりませんが、病気や怪我の状態からみて公共交通機関での通院は困難な場合など、タクシーを使用する妥当性が認められれば支給されます。タクシーの通院費を請求する場合は、領収書の添付が必要となります。
労災申請に際しては、治療に要した費用や休業補償金をまずは検討しがちですが、通院費用も回数を重ねると相当な金額になることも多いので、忘れずに請求しましょう。