これってパワハラ? パワーハラスメントの労災認定とは?

職場のパワーハラスメント、すなわちパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

職場のパワハラの行為とは?

似たものの間に共通に認められる、以下のようなものがあります。
※この類型は典型的なものであって、すべてを網羅するものではないことに注意が必要です。

➀暴行・傷害(身体的な攻撃)
➁脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
➂隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
➃業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 (過大な要求)
➄業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
➅私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

これらの類型では、「業務の適正な範囲」を超えたか否かの判断が重要になります。
➀については、業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできません。
➁と➂については、業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられます。
➃から➅については、業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があります。何が「業務の適正な範囲を超える」かについては、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右されると考えられるため、慎重な判断が求められます。

パワハラが労災認定される要件とは?

➀労災認定基準の対象となる精神障害を発病していること

認定基準の対象となる精神障害は、国際疾病分類第10回修正版「精神および行動の障害」に分類される精神障害で、業務に関連して発病する可能性がある精神障害の代表的なものは「うつ病」や「急性ストレス反応」などです。

➁精神障害の発症前に、約6か月以内に「業務による強い心理的負担」が認められること

「業務による強い心理的負担」とは、客観的に対象疾病を発病させる恐れのある強い心理的負荷のことをいい、業務による出来事とその後の状況が、労働者に強い心理的負荷を与えたといえるか評価します。
パワハラの中では、退職を強要されたり、ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた場合、基本的に「業務による強い心理的負担」があると評価されます。

➂業務以外の心理的負担や個体側の労働者本人の要因によって「精神障害」を発症したと認められないこと

私的な出来事(離婚または配偶者と別居したなど)や、本人以外の家族・親族の出来事(配偶者や子ども、親または兄弟が死亡したなど)が発病の原因でないといえるか、慎重に判断します。
精神障害の既往歴やアルコール依存症などの個体側要因の有無とその内容について確認し、個体側要因がある場合には、発病の原因でないと言えるかを慎重に判断します。

また、パワハラが認められる場合、パワハラをした加害者と会社に対して、法的責任を追及することができます。

加害者に対して取りうる法的措置は、まず民事上においては不法行為責任に基づく損害賠償請求、刑事上は名誉棄損罪、侮辱罪、脅迫罪、暴行罪、傷害罪、強要罪を追及する余地があるでしょう。
会社に対しては、民事上、使用者責任に基づく損害賠償請求と安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を問う余地があります。

ただ、これらの責任を追及するにはパワハラの存在を証明する証拠が必要です。
継続してパワハラがある場合、前もってある程度予測できるため、ボイスレコーダーやスマートフォンの録音機能等を使って、相手の言葉をそのまま残すことが最も確実な証拠となるでしょう。継続したパワハラではない場合、考えられる証拠としては、日記などに記録を残しておくことや、同僚に協力してもらい証言してもらうことなどが考えられますが、証拠としてはやや不十分です。
なるべく客観的で動かぬ証拠を残しておくことが望ましいです。

パワハラの被害者は、多大な精神的、肉体的ダメージを被ることになり、その中で病院での受診、労働基準監督署への相談、会社や加害者に対する損害賠償請求など法的手続きの検討をすることになり、その手間や労力は膨大なものになります。

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