セクハラでも労災認定!申請手続きと全手順

セクハラの労災認定

セクシャルハラスメント、すなわちセクハラとは、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」において、➀職場で「性的な言動」をされ労働条件について不利益を被ること、あるいは➁職場の「性的な言動」により就業環境が害されることを言います。
そして、「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。

例えば、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅、取材先、出張先、業務で使用する車中も「職場」と言えます。

セクハラが労災認定される要件

➀労災認定基準の対象となる精神障害を発病していること

認定基準の対象となる精神障害は、国際疾病分類第10回修正版「精神および行動の障害」に分類される精神障害で、業務に関連して発病する可能性がある精神障害の代表的なものは「うつ病」や「急性ストレス反応」などです。

➁精神障害の発症前に、約6か月以内に「業務による強い心理的負担」が認められること

「業務による強い心理的負担」とは、客観的に対象疾病を発病させる恐れのある強い心理的負荷のことをいい、業務による出来事とその後の状況が、労働者に強い心理的負荷を与えたといえるか評価します。

➂業務以外の心理的負担や個体側の労働者本人の要因によって「精神障害」を発症したと認められないこと

私的な出来事(離婚または配偶者と別居したなど)や、本人以外の家族・親族の出来事(配偶者や子ども、親または兄弟が死亡したなど)が発病の原因でないといえるか、慎重に判断します。
精神障害の既往歴やアルコール依存症などの個体側要因の有無とその内容について確認し、個体側要因がある場合には、発病の原因でないと言えるかを慎重に判断します。

「業務による強い心理的負担」(➁)が認められるかは、以下のように判断されます。

(1)「特別な出来事」がある場合は、心理的負荷が「強」であるとされ、「業務による強い心理的負担」が認められます。
ここにいう「特別な出来事」とは、強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシャルハラスメントを受けた場合を指します。

(2)「特別な出来事」がない場合でも、心理的負荷が「強」であるといえる場合は「業務による強い心理的負担」が認められます。
セクシャルハラスメントの内容、程度や継続する状況、さらにセクシャルハラスメントを受けた後の会社の対応および内容、改善の状況、職場の人間関係などを総合的に考慮して、心理的負荷評価を行います。

心理的負荷の程度について、具体的事例

●「強」とされる場合

胸や腰などへの身体接触を含むセクシャルハラスメントであって、
➀継続して行われた場合
➁行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった、又は会社への相談等の後に職場の人間関係が悪化した場合

身体接触のない性的な発言のみのセクハラであって、
➀発言の中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた場合
➁性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクハラであると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった場合

●「中」とされる場合

胸や腰などへの身体接触を含むセクシャルハラスメントであっても、行為が継続しておらず、会社が適切かつ迅速に対応し発病前に解決した場合
身体接触のない性的な発言のみのセクハラであって、
➀発言が継続していない場合
➁複数回行われたものの、会社が適切かつ迅速に対応し発病前にそれが終了した場合

●「弱」とされる場合

「〇〇ちゃん」等のセクシュアルハラスメントに当たる発言をされた場合
職場内に水着姿の女性のポスター等を掲示された場合

なお、具体的出来事の心理的負荷の強度が「中」または「弱」程度と評価される場合であっても、その前後に恒常的な長時間外労働(月100時間程度となる時間外労働)が認められる場合や、セクシャルハラスメント以外の出来事が複数生じた場合などには、総合評価が「強」となることがあります。他にも、セクシャルハラスメントという事案の性質上、様々な事情を考慮して労災認定がされることになります。

セクシャルハラスメントの被害者は、多大な精神的ダメージを被ることになり、その中で病院での受信、労働基準監督署への相談、会社や加害者に対する損害賠償請求など法的手続きの検討をすることになり、その手間や労力は膨大なものになります。
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セクシャルハラスメントで労災申請をお考えの方は、ぜひご相談ください。