【労働者向け】労災保険の加入条件と加入対象者を解説します

労災保険は、業務に起因する傷病や通勤中の怪我を負った労働者に対し、補償として給付金の支給を行う公的保険制度です。
例えば、仕事中に怪我をして治療が必要になったり、通勤中の事故による怪我で休業を余儀なくされたりした場合の治療費や休業補償は、労災保険から支払われます。

労災保険は、労働者の万が一に備えるための重要な保険です。
しかし、その加入条件や手続きについては詳しく知らない方も多いでしょう。また、労災保険に自身が加入しているかどうか確認したことのある方も少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、労災保険の加入条件や手続きについて詳しく解説します。加入の確認方法についてもご説明するので、気になる方は実践してみてください。

労災保険の加入対象者と加入条件

まずは、労災保険の加入対象者と加入条件について見ていきましょう。

労災保険の加入対象者

労災保険の加入対象となるのは、全ての労働者です。
この場合の労働者とは、労働基準法の中で以下のように定義されています。

◆労働者とは
職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者
(労働基準法第9条より)

つまり、事業主に雇用されて働き、給与を得ているすべての労働者が労災保険の加入対象となるのです。
労災保険の対象については、雇用形態は関係ありません。常勤社員であっても、派遣社員であっても、パート・アルバイト(短時間労働者)であっても、労災保険の加入対象になります。

労災保険の加入条件

労働者を労災保険に加入させる義務は、労働者を雇用している事業主にあります。
労働者を1人でも雇っている事業場には、労災保険の加入義務が課せられています。

労災保険の加入対象外者

雇用されて働いている労働者であっても、労災保険の加入対象にならない場合もあります。
それが、以下のような場合です。

・国の直営事業(国有林野・印刷・造幣)
・官公署の事業(非常勤の現業部門勤務の地方公務員を除く)

これらの事業に就く労働者は、いわゆる公務員で、公務災害保険の対象となります。よって、二重補償防止のため、労災保険の加入対象にはなりません。

また、代表権・業務執行権を持つ法人の役員や事業主と同居の親族、個人事業主なども労災保険の加入対象になりませんが、代わりに特別加入制度というものが設けられています。
この特別加入制度については、次章で詳しく解説します。

個人事業主などは特別加入制度がある

前章で触れたように、代表権・業務執行権を持つ法人の役員や事業主と同居の親族、個人事業主などは、労災保険の加入対象にはなりません。
しかし、一定の要件を満たした場合には、労災保険の特別加入制度の対象になる可能性があります。

◆労災保険の特別加入制度とは
労働者の定義から外れる人のうち、業務実態や災害の発生状況から労働者に準じて保護するべきとみなされた人に、労災保険の加入を認める制度のこと。特別加入には一定の要件が必要。
対象範囲は「中小事業主等」「一人親方等」「特定作業従事者」「海外派遣者」の4種。
(参考:厚生労働省『労働基準行政全般に対するQ&A』より)

特別加入制度を活用すれば、通常の労災保険では加入対象外とされた方も、特別加入として、労災保険に加入できる可能性があります。

近年、この特別加入制度の範囲は広がっていて、令和3年には「芸能関係作業従事者」や「アニメーション制作作業従事者」などが、令和4年には「あん摩マッサージ指圧師」や「はり師」などが加入対象に加えられました。
今後も職業の実態を受け、対象は増えていくものと考えられます。

(特別加入制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。「個人事業主でも労災保険に入れるか?特別加入制度について」

労災保険加入に関するよくある疑問

ここからは、労災保険の加入に関するよくある疑問を3つ、解決していきます。

労災保険の加入手続きは誰が行うのか?

労災保険の加入手続きは、事業主が行います。
事業主は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内(一部書類は50日以内)に、「保険関係成立届」や「保険料申告書」などの書類を、指定機関(労働基準監督署や公共職業安定所)に提出しなければなりません。

基本的に労働者自らが手続きを行うことはないので、「労災の加入手続きをした覚えがない!」と慌てる必要はありません。

労災保険の保険料は誰が負担するのか?

労災保険の保険料は、全額事業主が負担することになっています。労働者の負担は一切ありません。
同じ強制保険でも、雇用保険の保険料は事業主と労働者双方で負担することになるので、この違いを把握しておきましょう。

労災保険の保険料は、事業主が労働者に支払った賃金総額に規定の保険料率を掛けて算出しますが、この保険料率は業種によって異なります。
事業主は、前年度の調整分と今年度の概算保険料を、毎年6月1日〜7月10日の間に申告・納付することになります。

労災保険に加入しているかどうか、確認することはできるか?

自身が労災保険に加入しているかどうか確認したい場合には、厚生労働省の『労働保険適用事業場検索』をご利用ください。

この検索ページでは、働いている事業所の所在地や事業主名、法人番号を入力して検索することで、事業主が労働保険の保険関係成立手続を行っているか確認することができます。
会社に聞くという方法もありますが、まずは自身で検索してみると良いでしょう。

労災保険に加入していないことが判明した場合の対処法

ご紹介した検索ツールなどを用いて、働いている事業所が労災保険に加入していないことが判明した場合、労働者はどのように対応すれば良いのでしょうか。また、その場合の補償やペナルティはどうなるのでしょうか。
順に確認していきましょう。

労災前・労災後における労働者の対処法

労災に遭っていない状況で労災保険に加入していないことに気づいた場合には、労働局に相談するようにしましょう。労働局は相談の内容を受け、働いている会社に労災保険の加入手続きを促します。

また、労災に遭ってから労災保険に加入していないことに気づいた場合でも、労災保険の補償は受けられます。病院で治療を受ける際に労災による傷病であることを伝えてください。
その後、労働基準監督署に相談し、労災保険の給付金請求手続きを行います。

労災は、会社(事業主)に義務のある強制保険です。そのため、労災保険に加入していなくても、それは労働者の責任ではありません。労災保険未加入の状態で労災に遭っても、その労働者は労災保険の補償対象となります。

労災保険未加入のペナルティ

前述の通り、労災保険未加入の責任は、労働者ではなく会社(事業主)にあります。そのため、労働者がペナルティを受けることはありません。

一方、労災保険の加入手続きを怠っていた会社(事業主)は、以下のようなペナルティを受ける可能性があります。

・保険料を遡って徴収
・追徴金の発生
・労災発生時の保険給付における費用負担
・助成金の不支給

このようなペナルティは、会社(事業主)にとって大きな負担となります。

(労災保険未加入時の対応については、こちらの記事でも解説しています。「労災保険に加入していない状態で、仕事中にケガをしたらどうすればいい?」)

まとめ

労災保険の加入条件や加入対象、手続きなどについてご紹介しました。
雇用されて働く労働者は、労災加入の手続きや保険料の支払いを担いません。そのため、労災保険については日頃意識しないことが多いかもしれませんが、「労災保険は強制保険であること」「労働者の定義に当てはまらない方でも特別加入できる可能性があること」「もし未加入で労災に遭っても労災保険の補償は受けられること」は、押さえておきましょう。

また、労災については、「会社が労災を隠蔽しようとしている」「事業主が労災の請求手続きに協力的でない」などのトラブルが多く発生しています。労災トラブルの解決は、法律の知識なしには難しいものです。
そのため、もし労災関連のトラブルに巻き込まれたら、まずは弁護士にご相談ください。弁護士は、法律の観点から、労災トラブルを早期解決へと導きます。