フォークリフトの労災事故で請求できることとは?損賠賠償請求等についても解説

フォークリフトは、重くて多量の荷物を効率的に運ぶために必要な機械です。特に物流、建設、製造の現場で広く使われています。

便利な一方で、フォークリフトは事故が起きやすい機械でもあり、毎年多くの労災事故の原因となっています。
では、フォークリフトで事故に遭った場合、労働者はどのような補償を受けられるのでしょうか。

今回は、フォークリフトによる労働災害の現状、請求できる補償の内容、その手続きの流れについて、わかりやすく説明します。

フォークリフト事故の発生状況

厚生労働省の労働災害統計によると、近年のフォークリフトによる労災発生状況は以下のとおりです。

  • 2023年:発生件数1989件・死亡者数22人
  • 2022年:発生件数2092件・死亡者数34人
  • 2021年:発生件数2028件・死亡者数21人
  • 2020年:発生件数1989件・死亡者数31人
  • 2019年:発生件数2145件・死亡者数20人
  • 2018年:発生件数2113件・死亡者数26人

参考元:https://tebiki.jp/genba/useful/logi-forklift-accidents/

フォークリフトによる労働災害は毎年約2000件発生し、死亡者は年間20〜30人程度に上ります。
このことから、フォークリフトは重大事故を引き起こしやすい機械といえます。

一方で、インターネット通販の普及により物流業務の量は年々増加しています。
製造業や建設業でも作業を効率的に進めるため、フォークリフトの需要はさらに高まっています。
今後の利用拡大が見込まれる中、安全に使用するためには、事故防止に向けた徹底した対策が求められます。

フォークリフトによる労災事故で請求できること

フォークリフトによる労災に巻き込まれた場合、労働者は「労災保険の給付金」や「損害賠償」を請求することができます。

労災保険の給付金

労災保険は、仕事中のケガや病気、または死亡に対して、労働者や遺族に給付を行う公的な制度です。

業務中にフォークリフトによってケガや病気を負った場合、労災保険から「療養給付」や「休業給付」などの給付を受けられる可能性があります。

事業主に雇用される全労働者は、労災保険への加入が義務づけられており、事故に遭った場合は補償の対象になります。

損害賠償

労災事故において会社に法的責任があると認められた場合、被災労働者は事業主に対し損害賠償を請求することができます。

より十分な補てんを受けるためには、労災保険による給付とあわせて損害賠償の請求も検討すべきです。

ただし、損害賠償と労災保険では同じ損害について重複して給付や賠償を受けることはできません。損害賠償に含まれる費目のうち、慰謝料(入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料)などは、労災保険では支給されないため、別途請求が可能です。

フォークリフトによる事故が労災認定されるケース

労災保険の給付を受けるためには、その事故が「労働災害」であると正式に認定される必要があります。

フォークリフトによる事故が労災として認められるには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  • 業務遂行性(労働者が事業主の管理下で業務中に事故が発生したこと)
  • 業務起因性(事故の原因が業務に直接関連していること)

この2つの条件が両方とも認められた場合にのみ、事故は労災として認定されます。
いずれか一方でも欠けていると、労災とは認定されません。

最終的な認定の判断は、所轄の労働基準監督署が行います。

【関連記事】労災の認定基準|業務災害、通勤災害、精神障害、脳・心疾患

フォークリフトによる労災事故の主な原因と事例

フォークリフトによる労災は、主に「激突・転倒」「転落・落下」「はさまれ・巻き込まれ」の3つに分類されます。

以下に、それぞれの典型的な原因と具体的な事例を紹介します。

激突・転倒

運転中の不注意や誤操作によって障害物に衝突したり、傾斜のある場所でバランスを崩して転倒したりする事故です。これにより、運転者自身だけでなく周囲の作業員が負傷することもあります。

  • 事例:作業通路を歩いていた作業員が、後方から接近してきたフォークリフトにひかれた。
  • 事例:傾斜路でフォークリフトが転倒し、運転者が車体に挟まれて負傷した。

転落・落下

高所作業や積載物の不安定な運搬によって発生する事故です。作業者自身が転落する場合と、荷物が落下して他者に衝突する場合があります。

  • 事例:パレットの上で作業していた労働者が転落し、コンクリート床に落ちてけがを負った。
  • 事例:運搬中の荷物が落下し、近くで作業していた労働者に当たった。

はさまれ・巻き込まれ

フォークリフトの近くで作業していた労働者が、車体や積載物に挟まれたり巻き込まれたりしてけがを負う事故です。

  • 事例:エンジンがかかったままのフォークリフトと棚の間に挟まれて負傷した。
  • 事例:床材がフォークリフトに巻き込まれ、その反動で労働者がけがをした。

フォークリフトによる労災事故で損害賠償請求が認められるケース

フォークリフトによる事故でケガを負った被災労働者が、会社に対し損害賠償を請求できるのは、会社に事故の法的責任(法律上の責任)が認められる場合です。

具体的には、以下のような場合が考えられます。

安全配慮義務違反が認められる場合

労働契約法では、会社に対し、「雇用する労働者の健康や安全について適切な配慮を行う義務」が課せられており、これを安全配慮義務(労働契約法第5条)といいます。
会社がこの義務を果たさず、危険性を認識しながら適切な対策を講じなかった結果、労災事故が起きた場合には、被災労働者はこの義務違反を根拠に損害賠償を請求することができます。

例えば、フォークリフトの点検を怠っていたり、安全教育や作業環境の改善を行っていなかった場合には、安全配慮義務違反が認められる可能性があります。

使用者責任が認められる場合

民法では、雇用する者がその従業員の業務に関して第三者に損害を与えた場合、使用者(会社)が賠償責任を負うと定められています(民法第715条)。これを使用者責任といいます。
使用者責任を根拠に、従業員の過失により他の労働者が被害を受けたときには、被災労働者は加害従業員だけでなく、会社に対しても損害賠償を請求できる可能性があります。

例えば、同じ職場の従業員の操作ミスでフォークリフトにひかれたり、確認不足で巻き込まれたりした場合には、会社の使用者責任が問われる可能性があります。

工作物責任が認められる場合

民法では、土地の工作物(建物・構築物など)の設置や管理に瑕疵(かし:欠陥や不具合)があって事故が発生した場合、所有者が損害賠償責任を負うと規定しています(民法第717条)。
このような工作物の瑕疵による労災事故が起きた場合、被災労働者は、その工作物の所有者または管理者にあたる会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

具体例としては、作業通路が崩れてフォークリフトごと転落した事故や、荷揚げに使用していた棚が倒れて労働者が下敷きになった事故などが挙げられます。

フォークリフトによる労災事故で損害賠償請求が認められないケース

フォークリフトに関連して発生した労働災害でも、会社に法的な責任が認められなければ、損害賠償を請求することはできません。

例えば、会社の許可なくフォークリフトを操作して事故を起こした場合や、休憩時間中に私的に使用してけがを負った場合などでは、会社に対して事故の責任を問うのは困難です。

【関連記事】労災認定されない例|認定基準と認められない場合の対処法を徹底解説

フォークリフトの労災事故で会社へ損害賠償請求を行う流れ

フォークリフトに関連した労災に遭い、会社に対し損害賠償請求を行う場合には、以下の流れで手続きを進めていきます。

1.医療機関の受診・治療

労災事故に遭ったら、まずは医療機関を受診し、治療を開始します。このとき、病院の窓口では「労災であること」を伝え、健康保険は使用しないようにしましょう。

労災指定病院とそれ以外の病院では、後に行う給付手続きが異なります。手続きの簡便さを重視する場合は、労災指定病院の受診をおすすめします。

2.労災保険の給付金請求

ケガの状況に応じて、労災保険(労働者災害補償保険)の給付金を所轄の労働基準監督署に申請します。

給付金の種類は、支給対象となる内容に応じて異なります。

たとえば、治療にかかった費用は「療養給付(治療費の補助)」、休業を余儀なくされた場合は「休業給付(休業中の収入補てん)」が該当します。

なお、労災保険と損害賠償では、同一内容について二重に給付や賠償を受けることはできません。したがって、どの損害を保険給付で受け、どの損害を損害賠償として請求するかを整理しておくことが重要です。

3.損害賠償請求の開始

ケガの症状が固定し(これ以上治療しても改善が見込めない状態となり)、労災保険からの給付額が確定した段階で、会社に対する損害賠償請求の手続きを開始します。

一般的には、弁護士に依頼して内容証明郵便を用いて、会社に対して正式に請求の意思を通知する方法がとられます。

4.交渉・合意書作成

続いて、会社との交渉を行います。交渉は法的な知識や交渉技術が求められるため、この段階でも弁護士への依頼が有効です。
交渉がまとまった場合には合意書を作成し、損害賠償金の支払いにより手続きは完了します。

合意に至らなかった場合は、次のステップに進みます。

5.労働審判・裁判

労働審判や裁判は、裁判所の関与のもとで問題の解決を目指す手続きです。労働審判は原則3回以内の期日で結論を出す簡易な制度ですが、複雑な事案や長期審理が必要な場合は、通常訴訟(裁判)を選ぶことも検討されます。

どの手続きを選択すべきかの判断や対応は、弁護士に相談しながら進めることが望ましいでしょう。

【関連記事】労災における損害賠償請求とは?どのような種類の損害賠償が請求できるか

まとめ

フォークリフトでの事故をはじめとした労災については、労災無料相談センターにご相談ください。

労災保険の請求から会社への損害賠償請求まで、必要な手続きを実績豊富な弁護士が手厚くサポートします。

弁護士に手続きを依頼すれば、依頼者が負う負担は軽減され、労災によるケガの治療にも専念できるでしょう。

労災被害に遭ったときには、まずは当センターにお問い合わせください。