労災には時効がありますが知っていましたか?
労働災害によって負傷した場合、労働基準監督署に備え付けてある請求書を提出し、労働基準監督署において必要な調査を行い支給が決定されれば、様々な保険給付を受けることができます。
給付の内容は、療養補償給付、休業補償給付、その他の保険給付(障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金及び介護補償給付など)があります。
しかし、これらの請求権には時効があり、一定の期間を過ぎれば請求することができなくなるので注意が必要です。
以下、それぞれの給付の時効について見ていきましょう。
時効が2年
給付の種類 | 時効の起算日 |
療養補償給付のうち療養の費用の支給 | 療養に要する費用を支払った日又は費用の支出が具体的に確定した日ごとにその翌日 |
休業補償給付 | 療養のため労働することができないために賃金を受けない日ごとにその翌日 |
介護保障給付 | 介護補償給付の対象となる月の翌月の1日 |
葬祭料 | 労働者が死亡した日の翌日 |
時効が5年
給付の種類 | 時効の起算日 |
障害補償給付 | 傷病が治った日の翌日 |
遺族補償給付 | 労働者が死亡した日の翌日 |
1.療養補償給付
療養補償給付は、労働者が業務上の傷病により療養を必要とする場合に支給され、療養補償給付には、「療養の給付」(現物給付)と「療養の費用の支給」(現金支給)の2種類あります。
「療養の給付」は診療などを無料で受けられる現物給付であるため、時効は問題となりません。
他方、「療養の費用の支給」は労災指定病院等以外で療養を受けた場合などで、労働者がその費用を所轄労働基準監督署長に請求し支払いを受けるという方法で行われます(労働者は一旦、治療費を立替払いする必要があります)。
この場合は、療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年で時効になります。
2.休業補償給付
休業補償給付は、業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者がその療養のため働くことができず、そのために賃金を受けていない日が4日以上に及ぶ場合に休業4日目以降から支給されます。
その内容は、(給付基礎日額の60%)×休業日数となります。
賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年で時効になります。
3.介護保障給付
介護(補償)給付とは、労働者が、仕事中又は通勤中の事故により負傷・疾病し、障害の状態が重度のため、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間、その介護費用の実費補填として支給される給付のことをいいます。
介護(補償)給付は介護を受けた月ごとに請求権が発生し、その翌月の1日から2年で時効になります。
4.葬祭料
葬祭を行った遺族などに対して、葬祭料(業務災害の場合)または葬祭給付(通勤災害の場合)が支給されます。
葬祭料(葬祭給付)の額は、31500円に給付基礎日額の30日分を加えた額です。この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分が支給額となります。
労働者が死亡した日に請求権が発生し、その翌日から2年で時効になります。
5.障害補償給付
業務または通勤が原因となった負傷や疾病が治ったとき、身体に一定の障害が残った場合には、障害保障給付(業務災害の場合)または障害給付(通勤災害の場合)が支給されます。
障害等級1級から7級に該当するときは、障害(補償)年金(給付基礎日額の313日分~131日分)、障害特別支給金、障害特別年金が支給されます。
障害等級8級から14級に該当するときは、障害(補償)一時金(給付基礎日額の503日分~56日分)、障害特別支給金、障害特別一時金が支給されます。
労働者の傷病が治癒した日に請求権が発生し、その翌日から5年で時効になります。
6.遺族補償給付
業務または通勤が原因でなくなった労働者の遺族に対し、遺族補償給付(業務災害の場合)または遺族給付(通勤災害の場合)が支給されます。
遺族(補償)給付には、遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金の2種類があります。
年金を受ける遺族がいる場合は、遺族(補償)年金が支給されることになり、遺族数などに応じて、遺族(補償)年金(給付基礎日額の245日分~153日分)、遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。
他方、被災労働者の死亡の当時、遺族(補償)年金を受ける遺族がいない場合、遺族(補償)一時金が支給されます。
労働者が死亡した日に請求権が発生し、その翌日から5年で時効になります。
7.傷病補償年金
傷病(補償)年金は、請求によらず労働基準監督署長の決定で支給されるので、時効の問題は生じません。
このように、多くの受給権が比較的短い期間の時効となっているので、時効を過ぎてしまうと、受給できる金額が大幅に違ってきてしまいます。
ただ、労災保険を時効により請求できなくなったとしても、民法上の損害賠償を請求できる余地があります。会社側の安全配慮義務違反に基づく債務不履行責任を追及する場合は10年、会社側の故意・過失に基づく不法行為責任を追及する場合は3年、請求することができます。
仕事中の怪我や病気に基づいて、様々な種類の給付を受けることができますが、現時点でどのような給付を受けることができるか、その手続きをどのようにするか、被災労働者ご本人やその家族の方が様々な手続きを全て行うのは相当の時間と労力が必要です。
労災を多く取り扱ってきた弁護士法人法律事務所テオリアでは、請求できる権利の説明や適切な書類の書き方はもちろん、受診する際のポイント等をお教えいたしますし、会社との交渉、場合によっては訴訟まで、あらゆる法的手続きを行うことが可能です。申請後の見通しについても、予想される等級や、受給できる金額、弁護士費用について、受任前に詳細にご説明します。労災を被ったが時効になっているのではないか不安な方、是非お気軽にご相談ください。