労災認定の審査期間にかかる時間はどれくらい?

労災認定にかかる審査期間の目安は?

1.労災の認定とは

仕事中に仕事が原因で怪我や病気をした場合、労災保険により様々な給付金を受けることができます。ただし、労災保険による給付金を受けるためには、会社に対し労災を申請したい旨を申し出、労働基準監督署に対し必要書類を提出するなどの手続きを自分でしなければなりません。
それでは、申請してから労災として認定されるにはどのくらいの時間を要するのでしょうか。手続きと合わせてみていきたいと思います。

例えば、明らかに仕事中に仕事が原因で怪我をしたと判断できる場合、実は労災申請をしてから認定されるまでにそれほど時間はかかりません。仕事中の怪我だとわかる証拠があり、会社が素直に労災申請に協力してくれるケースでは、申請から1か月以内に認定されるケースも多いようです。

 

2.労災認定に時間がかかるケース

これに対し、労災認定に時間がかかるケースもあります

ひとつは、後遺障害の障害等級の認定が難しいケースです。

後遺障害は、仕事による病気や怪我が治癒した段階で、厚生労働省の定める障害等級のいずれかに該当する場合に認定されます。
後遺障害と認定されるためには、まず、本人が、医師に後遺障害が残るか相談し、後遺障害診断書を書いてもらう必要があります。後遺障害の内容は様々で、身体の部位や症状の程度に応じて規定があり、認定に際し医師による慎重で確実な診断が求められます。

次に、本人が、診断書などの必要な資料を添えて所轄の労働基準監督署長に「障害補償給付支給請求書」を提出します。その際、事業主は仕事中に本人が怪我をして休業中であることを証明し、請求書の提出に協力してもらう必要があります。
請求書を受け取った労働基準監督署は、提出された書類を精査し、後遺障害等級に該当すると判断した場合に支給を決定します。この判断に際し、どの等級に当たるかの認定が難しい場合、調査官による聞き取りなどを行ったり、医師に確認をするため、申請から認定までの時間がかかることになります。

もうひとつは、仕事と病気や怪我との因果関係の判断が難しいケースです。

例えば、労働者が精神障害の病気を患ったり自殺した場合、その結果が仕事が直接的な原因で発生したと言えるか、一概には判断できません。
一般的に、精神障害は、外部からのストレス(仕事によるストレスや私生活でのスト レス)とそのストレスへの個人の対応力の強さとの関係で発病に至ると考えられています。 発病した精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いスト レスによるものと判断できる場合に限ります。
仕事によるストレスが強かった場合でも、同時に私生活でのストレスが強かったり、その人の既往症やアルコ ール依存などが関係している場合には、何が発病の原因なのかを医学的に慎重に判断しなければなりません。この認定に時間を要するのです。

また、長時間労働により精神障害を発病した場合、労災認定されるには長時間労働の事実を証明する証拠が必要となります。しかし、いわゆるブラック企業といわれる会社ではタイムカードが存在しないケースも多く、パソコンのログイン履歴を解析したり、メールの記録を精査する等、証拠の収集と整理に非常に時間がかかってしまいます。

 

3.事例

精神障害により自殺したケースでの、労災認定に要する時間を、事例をもとに見ていきましょう。
まず、電通新人社員の高橋まつりさん(当時24)が2015年12月に過労自殺したケースでは、翌2016年9月30日付で労災認定がされており、死亡後すぐに申請したとすれば、認定までに9か月を要したことになります。
また、NHKの首都圏放送センターに勤務していた佐戸未和記者(当時31)がうっ血性心不全で13年7月に亡くなり、長時間労働による過労死と判断されたケースでは、翌2014年5月に労災認定がされており、認定まで約10か月かかったことになります。

他方で、精神疾患により自殺した場合でも、労災認定が早かったケースもあります。
2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設工事に従事していた現場監督の男性(当時23)が自殺したケースは、2016年の7月に男性の両親が労災を申請し、認定されたのが10月ですので、3カ月での認定となりました。

労災認定をした新宿労基署は、男性が自殺する前の1か月間に190時間18分の時間外労働をしていたと認定し、長時間労働や深夜労働などの過重な業務などによって精神障害を発病し、自殺に至ったと認めました。
厚生労働省の規定によれば、精神障害の発病から直近の1カ月間で160時間以上の時間外労働があった場合、業務外で特別な事情がなければ、長時間労働を原因として労災を認定します。今回のケースでは、長時間労働の記録の存在により、労災認定を早めることができたと言えるでしょう。

 

4.最後に

労災を申請するには、いくつもの手続きがあり、書類を揃えるのも大変です。今回見た通り認定されるまで時間がかかるケースもあり、労働者やご家族自身が労災申請をするのは大きな負担となります。

労災を多く取り扱ってきた弁護士法人法律事務所テオリアでは、申請してからどのくらいの期間で認定がおりるか等の見通しをお教えいたしますし、証拠の収集についてアドバイス、場合によっては証拠の整理、調査も行います。また、予想される等級と、受給できる金額、弁護士費用について、受任前に詳細にご説明しますので、労災申請をお考えの方、是非お気軽にご相談ください。