労災による休業でボーナスが減る?欠勤の扱いや減給について解説

労働災害(労災)とは、業務に関連した事故等によって労働者が負った傷病のことです。労災で休業した場合、被災労働者には、会社や労災保険から補償が行われます。

では、このような場合、ボーナスの支払いはどうなるのでしょうか。金額が減ることはあるのでしょうか。

今回は、労災による休業時のボーナスの取り扱いについてわかりやすく解説します。

労災による休業は欠勤扱いになる?

会社から支払われる給料やボーナスの金額は、欠勤の影響を受けることがあります。そのため、「労災による休業が欠勤として扱われるのかどうか」は、労働者にとって気になるポイントのひとつでしょう。

特に労災によって長期休業を余儀なくされた場合、休業が与える給料やボーナスへの影響は大きなものになります。

結論から述べると、労災による休業が欠勤として取り扱われる可能性は高いです。

たとえ労災であっても、労働契約で定めた労働日数・時間を実際の労働が満たしていなければ、それは契約義務の不履行にあたるためです。これを欠勤として、給与やボーナスが減額されることは十分考えられます。

また、そもそもボーナスは法律上必須とされるものではありません。よって、その支給条件は使用者である会社が自由に決めることができます

この条件において、「労災の休業を欠勤とし、減給の対象にする」と決めている会社も当然あるでしょう。

ただし、労災による休業を欠勤とするかの取り扱いは会社によって異なります。就業規則や労働契約書を確認する等して、自社の対応を確認しておきましょう。

労災で休業した際に受け取れる補償

労災による休業には減給の可能性がありますが、その一方で補償も準備されています。それが、次の2種類です。

  1. 会社から支給される「休業手当」
  2. 労災保険から支給される「休業(補償)給付」

各補償の内容を詳しくみていきましょう。

①会社から支給される「休業手当」

労災による休業においては、会社から「休業手当」が支給されます。

その金額は、給付基礎日額の60%。給付基礎日額とは、事故発生日の直前3ヶ月間に、その人に対して支払われていた金額(ボータスは含まない)を歴日数で割った、いわゆる平均賃金のことです。

ただし、労災保険からの補償がある場合には、会社からの補償は行われません。労災による休業の場合、労災保険の休業(補償)給付が開始となるのは休業4日目から。よって、休業3日目までは、会社による休業手当が被災労働者に支給されることになります。

②労災保険から支給される「休業(補償)給付」

労災で働くことができず療養のために休業し、会社から賃金を受けていない場合には、労災保険から「休業(補償)給付(業務災害の場合は休業補償給付、通勤災害の場合は休業給付と呼ばれます)」が支給されます。

先述のとおり、支給の対象となるのは休業4日目からです。

労災保険の休業(補償)給付も、支給額は給付基礎日額の60%と決められています。ただし、この制度では「休業特別支給金」という補償も設定されており、これによりさらに給付基礎日額の20%が支払われます。

つまり、被災労働者は給付基礎日額の80%を受け取ることができるのです。

支給額の計算方法について、「労災の休業補償の計算方法を詳しく解説|賃金の総額や土日のカウントについて」で詳しく解説していますので、ご一読ください。

労災による休業でボーナスは減る?

先述のとおり、労災による休業でボーナスが減る可能性はありますボーナスの支給要件は、使用者が自由に決められるためです。

「労災による休業も欠勤とし、ボーナスの減額要素とする」という要件が定められていれば、被災労働者のボーナスは減ってしまうでしょう。

しかし、労災は業務に起因したものであり、一概に労働者に非があるとはいえません。そのため、私的な傷病とは性質が異なる点は考慮すべきだと考えられます。

この考えから、被災労働者のボーナスを減額しない会社も、一定数いるでしょう。

とはいえ、ボーナスの支給要件には、会社ごとに違いがあります。結論として、労災による休業でボーナスが減るかどうかは、「会社による」といえるでしょう。

「ボーナス特別支給金」によって補填される場合とは

労災による休業時に会社からボーナスを減らされてしまったとしても、被災労働者は労災保険の「ボーナス特別支給金」という制度を利用できる場合があります。

ここからは、この制度の詳細について詳しくみていきましょう。

ボーナス特別支給金とは

ボーナス特別支給金とは、社会復帰促進等事業の一環として給付される、労災事故以前に支払われた特別給与に関する給付金のこと。3ヶ月を超える期間ごとに支払われていた賃金が、その対象となります。

具体的には、6ヶ月に1度支払われるボーナスや半期ごとの売り上げに応じて支払われる販売奨励金等を思い浮かべると良いでしょう。

ボーナス特別支給金の種類

ボーナス特別支給金は、次の5種類に分類されます。

  • 障害特別年金
  • 障害特別一時金
  • 遺族特別年金
  • 遺族特別一時金
  • 傷病特別年金

労災保険の上記5種の支給金は、本体給付に上乗せする形で支払われます。

支払われる金額は労災保険の本体給付の種類や等級等によって異なりますが、どの場合も「算定基礎日額×○︎日分」という形で算出されます。この算定基礎日額とは、労災事故発生日以前の1年間において、その労働者が使用者から受けた特別給与(ボーナス等)の総額を365で割ったものです。

労災保険給付の申請方法

休業(補償)給付をはじめとした労災保険の給付を受け取るためには、必ず申請手続きを行わなければなりません。

この申請手続きは会社が代理で担うことが多いですが、会社が手続きに対応してくれない場合には、被災労働者自らが手続きを行うようにしましょう。

労災保険の申請の大まかな流れは、次のとおりです。

  1. 労災事故の発生、会社への報告
  2. 医療機関を受診、治療の実施
  3. 申請書類(各給付金の請求書)を作成、添付書類の準備
  4. 労働基準監督署へ書類を提出
  5. 労基署による調査や面談
  6. 労災認定・非認定の決定通知、給付金の振り込み

労災時の医療機関の受診では、窓口で「労災である」旨を伝え、健康保険は使わないようにしましょう。

この時、労災指定病院を受診すれば、被災労働者は無料で治療や薬の給付を受けることができます。労災指定ではない病院を受診した場合、一旦医療費等の全額を被災労働者が立て替えることとなるので注意してください。

また、申請書類である請求書には、事業主の証明欄が設けられています。この部分は必ず事業主に記入してもらわなければなりません。

ただし、事業主の協力が得られない場合には、空白のまま提出し、労基署の担当者にその理由を伝えるようにしましょう。

労災の申請方法については、「労災を申請する流れを徹底解説!病院受診から給付まで」でも解説していますので、ご一読ください。

会社に対して損害賠償請求を検討する

被災労働者は、会社に対し、損害賠償請求を行える可能性があります。これが可能なのは、労災発生の法的責任が会社にある場合です。具体的には、安全配慮義務違反や使用者責任、工作物責任等が考えられます。

労災による傷病は労災保険で補償されますが、その内容は十分とはいえません。しかし、損害賠償請求によって、この補償を充実させることは可能です。なぜなら、損害賠償では、労災保険で補償されない慰謝料を請求することができるためです。

また、損害賠償では休業損害を請求することも可能です。しかし、同じ理由による補償を二重で受けることはできないので、損害賠償の休業損害と労災保険の休業補償を併用した場合には、金額の相殺が行われます。

会社への損害賠償には、法律の知識や交渉の技術が必要です。労災での損害賠償を検討するなら、労災問題の実績が豊富な弁護士にご相談ください。

弁護士の手を借りれば、法的根拠を示しながら、会社との交渉を論理的かつスムーズに進めることができます。円満な早期和解を目指すことも可能でしょう。

まとめ

労災による休業では、給料やボーナスが減額となる恐れがあります。

一方で、会社から、また労災保険からの補償制度はしっかり整備されています。休業から3日は会社からの休業手当、4日目以降は労災保険の休業補償を受けるというのが、一般的でしょう。

また、ボーナスについても、一部の労災給付では特別支給金としての補償が設定されています。

ただし、これらの補償を受けるためには申請手続きが必要です。手続きは忘れずに行うようにしましょう。