労災の補償期間・申請期限・認定までの期間を解説

労災に遭った労働者は、その状態に応じた給付金を受け取ることができます。
しかし、この給付金は無期限で受け取れるわけではありません。労災補償には、給付金ごとに補償期限が定められています。また、申請手続きの期限も存在します。

そこで今回は、労災の補償期間や申請期限について解説します。これらは給付金の種類によって異なるので、ご自身の受け取る給付金の期限を間違えないようご注意ください。

労災の補償期間はいつまで?給付別に解説

労災の給付金には、次の8種類があります。

  • 療養(補償)給付
  • 休業(補償)給付
  • 傷病(補償)年金
  • 障害(補償)給付
  • 介護(補償)給付
  • 遺族(補償)給付
  • 葬祭料(葬祭給付)
  • ニ次健康診断等給付

それぞれの補償期間を見ていきましょう。

療養(補償)給付の補償期間

療養(補償)給付は、労災による傷病の療養にかかる治療費や薬代などを補償するものです。労災指定病院を受診した場合には治療の現物給付を、それ以外の医療機関を受診した場合には治療にかかった費用の補償を受けられます。

この給付の補償期間は、「労災で傷病を負ってからそれが治癒するまでの間」です。
この場合の治癒とは、傷病が完全に治ることではなく、一般的な医療行為を行なってもその効果が期待できなくなった状態(症状固定とも言います)を指します。
治癒(症状固定)の判断は、医師が行います。

休業(補償)給付の補償期間

休業(補償)給付は、労災による傷病で仕事を休業した場合の補償です。
休業4日目から支給され、その額は給付基礎日額の80%となります。

この給付の補償期間は、「休業(補償)給付の支給要件を満たしている期間」です。
この場合の支給要件とは、「労災による傷病の療養中であること」「働ける状態ではないこと」「賃金を受けていないこと」の3つ。どれかひとつでも欠けると、給付は打ち切りとなります。

傷病(補償)年金の補償期間

傷病(補償)年金とは、労災によって傷病を負ってから1年6ヶ月を経過しても傷病が治癒せず、その状態が規定の傷病等級に該当する際に支給されるものです。
傷病等級は第1級〜3級まで設定されており、それぞれの等級で支給額は異なります。

この給付の補償期間は、「傷病等級を満たし治療を継続している期間」です。
症状が治癒し、治療が終了した場合には、障害(補償)給付への切り替えが行われます。

障害(補償)給付の補償期間

障害(補償)給付とは、労災による傷病が治癒した時に、身体に一定の障害が残り、その程度が規定の障害等級に該当する場合に支給されるものです。
障害等級は第1級〜第14級まで設定されており、第1級〜7級は年金、第8級〜14級は一時金型の支給となります。

障害(補償)年金の補償期間には、決まりがありません。対象の被災労働者が生きている限り、給付は続きます。
ただし、障害の状態が変わった場合には、障害等級の変更が必要です。

介護(補償)給付の補償期間

介護(補償)給付とは、傷病(補償)年金または障害(補償)年金を受け取っている方のうち、該当する等級が1級または2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有し、現在介護を受けている場合に支給されるものです。
常時介護が随時介護かによって、給付の内容は異なります。

この給付の補償期間は、「支給要件を満たしている期間」です。
この支給要件とは、「一定の障害の状態に該当する」「介護を受けている」「入院していない」「介護老人保健施設などに入所していない」の4つです。

遺族(補償)給付の補償期間

遺族(補償)給付とは、労災によって亡くなった方の遺族に給付されるものです。
年金と一時金の2種類が設定されていて、条件を満たした遺族(受給権者)はこれを受け取ることができます。詳しい条件については、遺族(補償)給付のパンフレットでご確認ください。

年金給付の補償期間は、「受給権者の失権まで」です。
受給権者には順位がありますが、給付を受け取っていた受給権者が失権した後には次の順位の遺族が受給権者となり、給付を受け取ることができます。

葬祭料(葬祭給付)の補償期間

葬祭料(葬祭給付)とは、労災で亡くなった人の葬祭料として給付されるものです。
その金額は「315,000円+給付基礎日額の30日分」または「給付基礎日額の60日分」どちらが多い方になります。

これは一度だけ支給されるものであり、補償期間というものはありません。

ニ次健康診断等給付の補償期間

二次健康診断等給付とは、会社の定期健康診断で異常が見つかった場合に、脳血管や心臓の状態を把握するための二次健康診断および疾患予防のための保健指導を無料で受診できるというものです。

これは1年度に1回利用できる制度であり、補償期間というものはありません。

労災の休業補償期間が打ち切りになるケース

労災の休業(補償)給付については、前章の補償期間でご紹介した支給要件を満たさなくなった場合以外にも、打ち切りになることがあります。

休業(補償)給付が打ち切りになるのは、傷病(補償)年金の支給が決まった場合です。これらの併給は認められていないため、傷病(補償)年金の支給が決まれば、休業(補償)給付は打ち切りとなります。
ただし、この場合でも療養(補償)給付の支給は続きます

また当然のことですが、障害(補償)給付の支給が決まった場合にも、休業(補償)給付は打ち切りとなります。障害(補償)給付が支給されるということは「症状が治癒(症状固定)した」ということであり、休業(補償)給付の「療養中である」という要件を満たさなくなるためです。

(労災の休業期間が打ち切りになるケースについては、こちらで詳しく解説しています。「労災の休業補償期間はいつまでか?打ち切りになるケースとは?」

労災申請できる期間はいつまで?申請期限・時効について

労災の各給付には、申請期限つまり時効が設定されています。
それぞれの時効を一覧で確認していきましょう。

  • 療養(補償)給付・・・療養の費用を支出した日の翌日から2年
  • 休業(補償)給付・・・賃金を受けない日の翌日から2年
  • 傷病(補償)給付・・・時効なし
  • 障害(補償)給付・・・傷病が治癒した日の翌日から5年
  • 介護(補償)給付・・・介護を受けた月の翌月の1日から2年
  • 遺族(補償)給付・・・被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
  • 葬祭料・葬祭給付・・・被災労働者が亡くなった日の翌日から2年
  • 二次健康診断等給付金・・・一次健康診断の受診日から3ヶ月以内

療養(補償)給付の場合は療養の費用を支出した日ごとに、休業(補償)給付の場合は賃金を受けない日ごとに請求権が発生します。

上記の時効を過ぎてしまった場合、各給付の請求権は消失し、労災請求はできなくなってしまうので注意しましょう。

(労災給付の申請期限については、こちらで詳しく解説しています。「労災申請の期限はいつまで?給付別に期限を解説」

労災認定までにかかる期間

最後に、労災認定までにかかる期間も確認しておきましょう。

労災申請の手続きを行なってから労災認定・不認定の決定が出るまでには、一定の時間がかかります。労働基準監督署がその労災について調査を行う時間が必要になるためです。
この時かかる期間の目安は、1ヶ月〜3ヶ月ほどです。ただし、ケースによっては1年以上かかる場合もあります。

労災認定までにかかる期間は、書類の不備によって長くなることもあります。スムーズに労災認定を受けるには、不備のない書類を用意することが大切です。

まとめ

労災の補償期間は、給付の種類によって異なります。また、申請期限も同様に異なります。
補償を受ける人にとって、「いつまで給付を受け取れるか」「いつまでに手続きをしなければならないか」は重要なポイントです。受け取る給付については、これらの点をきちんと把握し、早めに手続きを行うことが大切です。

また、労災では会社に損害賠償請求を行えるケースもあります。この場合、労災保険では補償されない慰謝料を受け取ることも可能です。
損害賠償請求を検討する場合には、弁護士に相談し、然るべきサポートを受けるようにしてください。