なぜ労災は弁護士に相談するべき?弁護士に依頼するメリットを解説

労災事故が発生した時には、弁護士への相談を検討する必要があります。なぜなら、労災の発生にあたっては、法律の絡むさまざまな手続きが発生するためです。

弁護士のサポートを受けることは、労災に遭った労働者にとっても、労働者を雇用している企業にとっても大きなメリットになります。

では、労災にあたっての弁護士への依頼には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

今回は、なぜ労災に関する手続きを弁護士に依頼するのか、そのメリットについて詳しく解説します。

被災した労働者が弁護士に相談するメリット

労働災害に遭った労働者が弁護士に相談するメリットとしては、次の4点が挙げられます。

1. 適切な賠償を受けられる
2. 適切な後遺障害認定を受けられる
3. 必要な手続きや交渉を弁護士に任せることができる
4. 不安や疑問が解消される

各メリットについて詳しくみていきましょう。

1.適切な賠償を受けられる

労災発生の法的責任が会社や第三者にある場合、被災した労働者は会社や第三者へ損害賠償請求を行うことができます。しっかりと補償を受けるためにも、この手続きは非常に重要です。

しかし、損害賠償請求の手続きは複雑です。賠償額の計算をしたり相手と交渉したりするには、法的な知識が必要であり、手間もかかります。そこで検討すべきなのが、弁護士への相談です。

弁護士の手を借りれば、法的な知識がなくても、被災労働者は適切な賠償を受けることができます。場合によっては、弁護士がつくことで、それまで誠意を示さなかった会社側の対応が変わることもあるでしょう。

損害賠償請求を有利に進めることができる点は、弁護士に相談するメリットのひとつです。

2.適切な後遺障害認定を受けられる

労災による傷病で後遺障害が残った場合、被災労働者は企業や第三者に対し、損害賠償請求の一種として、後遺障害慰謝料を請求できます。

この後遺障害慰謝料の額は、「後遺障害認定がおりるか」また「認定される後遺障害等級は何級か」によって、大きく変わります。

この認定手続きにおいて、判断の重要な資料となるのが、担当医師によって作成される後遺障害診断書です。後遺障害診断書の内容は、認定の可否や等級に影響します。その内容によっては、実際の症状よりも軽い等級で後遺障害認定がなされたり、そもそも後遺障害自体が認定されなかったりすることも考えられるのです。

弁護士に依頼すれば、被災労働者は後遺障害認定手続きのサポートを受けることができます。労基署に提出する前の、診断書のチェックや意見書の作成を弁護士が担うことで、適切な後遺障害認定を受けられる可能性は高くなるでしょう。

3.必要な手続きや交渉を弁護士に任せることができる

損害賠償の手続きや交渉、労災保険の申請手続きなど、労災に遭った被災労働者は多くの手続きを担わなければなりません。傷病を負いながらこれらの手続きを進めるのは、大きな負担になるでしょう。

しかし、弁護士に依頼すれば、さまざまな手続きを代行してもらったりサポートしてもらったりすることができます。企業や第三者とのやり取りも弁護士が担うため、被災労働者は自身の負担を軽減し、療養に専念することが可能です。

4.不安や疑問が解消される

労災に遭った労働者の多くは、さまざまな不安や疑問を抱えています。例えば、「損害賠償請求でどれくらいの賠償金を受け取れるのか」「労災認定の可能性はどれくらいか」「補償はいつまで続くのか」「後遺障害が残ったらどうしよう」など。

弁護士に依頼した場合、このような不安や疑問は、弁護士に聞くことですぐに解決できます。より良い補償や生活のためのアドバイスを聞くこともできるため、被災労働者の不安は和らぐでしょう。

労災事故が起きた企業が弁護士に相談するメリット

労災事故が起きた時には、労働者側ではなく企業側が弁護士に相談することもあります。弁護士のサポートにより、企業は次のようなメリットを受けられるためです。

1. 労災対応のサポートを受けられる
2. 企業が過大な責任を追わないよう相手と交渉してもらえる

上記メリットについて詳しくご説明します。

1.労災対応のサポートを受けられる

労災が発生した時には、企業はさまざまな手続きや対応を担わなければなりません。

例えば、労災申請の手続きは被災労働者に代わって企業が行うのが一般的です。また、労災申請を行えば、労基署からの問い合わせや聞き取りへの対応も必要になるでしょう。

被災労働者が損害賠償を請求した場合や労災が刑事事件化した場合にも、企業は適切な対応を取らなければなりません。

弁護士に依頼した場合、企業は上記のような手続きを全面的にサポートしてもらうことができます。相手との交渉や専門機関からの問い合わせも弁護士が窓口となるため、企業側の負担は減るでしょう。

2.企業が過大な責任を追わないよう相手と交渉してもらえる

労災によって損害賠償を請求された場合、企業は自社が過大な責任を負わされないよう、適切な交渉を行う必要があります。これには法的な知識や経験が必要となるため、より有利に交渉を進めるためには、法律の専門家である弁護士の手を借りるべきでしょう。

また、労災申請の書類作成にあたっては、その内容が企業側の責任の程度に影響する可能性があります。弁護士に依頼すれば、「どこまでの内容をどのような表現で記載するべきか」というアドバイスを受けることができ、これにより企業は過大な責任を負うことを避けることができます。

労災相談に関する弁護士費用

労災について弁護士に相談するためには、費用がかかります。ここではその相場について、労働者の立場と企業の立場に分けてご紹介します。

労働者による相談の場合

弁護士費用には、法律事務所によって大きな差があります。

主な費用項目は、相談料・着手金・成功報酬金の3つ。それぞれの相場は次のとおりです。

【弁護士費用の相場】

  • 相談料・・・5,000円〜/30分
  • 着手金・・・10〜30万円程度
  • 成功報酬金・・・獲得金額の10〜30%程度

前述のとおり、法律事務所によって金額設定は大きく異なります。上記はあくまで目安だと考えてください。

また、労災案件の場合、相談料や着手金を無料にする法律事務所も多いです。損害賠償請求と労災申請の手続き代行の費用がそれぞれ別にかかるケースもあるので、弁護士への相談にあたっては、金額だけでなく費用体系もよく確認しておくようにしましょう。

企業による相談の場合

企業が弁護士に相談したい場合には、顧問弁護士の手を借りることが多いでしょう。この場合、契約範囲内の対応を依頼するのであれば、通常の顧問料だけで対応してもらうことができます。

ただし、契約外の対応を依頼するのであれば、その都度追加料金が発生します。
金額や契約範囲は企業や弁護士によって異なるため、一概には言えません。

労災事故で請求できる慰謝料の相場

労災事故発生の法的責任が企業や第三者にある場合、被災労働者は損害賠償を請求できます。この損害賠償では、慰謝料を請求できる点が大きな特徴。慰謝料は、次の3種類に分かれます。

  • 死亡慰謝料・・・労災による死亡に対する慰謝料
  • 後遺障害慰謝料・・・労災による後遺障害の苦痛に対する慰謝料
  • 入通院慰謝料・・・労災による入通院の苦痛に対する慰謝料

各慰謝料の相場をご紹介します。

死亡慰謝料の相場

死亡慰謝料の相場は、被災労働者の立場によって以下のように異なります。

  • 被災労働者が一家の支柱である場合・・・2,800万円
  • 被災労働者が母親・配偶者である場合・・・2,500万円
  • その他・・・2,000〜2,500万円

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の相場は、後遺障害等級によって異なります。

等級相場額等級相場額
12,800万円8830万円
22,370万円9690万円
31,990万円10550万円
41,670万円11420万円
51,400万円12290万円
61,180万円13180万円
71,000万円14110万円

入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料は、過去の裁判から相場が設定されており、その額は傷病の程度や入通院の期間によって異なります。入通院の期間が長いほど、慰謝料の額は高くなるのが通常です。

労災事故の慰謝料については、「労災事故の慰謝料の相場額は?労災の損害賠償金を解説」でも詳しく解説しています。

まとめ

労災について弁護士に相談することには、多くのメリットがあります。弁護士の手を借りれば、複雑な労災関連の手続きや難しい交渉も、負担なくよりスムーズに進めることができるでしょう。

ただし、弁護士に依頼するには費用がかかります。費用や費用形態は法律事務所によって大きく異なるため、「いくら支払う必要があるのか」必ず事前に確認するようにしましょう。