仕事中に指切断事故が発生|労災認定の流れ・障害等級について詳しく解説

会社に雇用されて働く人が仕事中の事故で手指を切断することになった場合、そのケガは労災(労働災害)として労災保険の補償対象になります。実際、労災事故により指を切断してしまう事例は少なくはありません。

では、このような場合、被災した労働者はどのような補償を受けられるのでしょうか。またそのためにはどのような手続きが必要なのでしょうか。

今回は労災事故による指の切断時の補償と手続きについてわかりやすく解説します。

労災事故による指切断の事例

まずは、労災事故によって労働者が指を切断することになった事例を3つご紹介します。

【事例①】電動丸ノコギリで指を切断

2019年7月、愛知県の運送業者に属する労働者が、業務中に指を切断する事故に遭いました。被災した労働者は、別の従業員が配送物の落下により個人宅の床を破損させたため、その床の修理を行っていたとのこと。修理の過程で電動丸ノコギリを使い、これに指が接触したことが事故に繋がったとみられています。
この労災事故では、会社は労基署に労働者死傷病報告書を提出せず、自社で治療費補償や休業補償を行なっており、会社および代表者は労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されることとなりました。

【事例②】食肉加工機械に指を挟まれて一部切断

2000年3月、栃木県の食料品製造会社では、労働者が機械に指を挟まれ切断する事故が起きています。被災した労働者は、食肉加工の過程で機械に肉を投入する際に片手の人差し指を巻き込まれ、その一部を切断することとなりました。
この件でも、会社が労働者死傷病報告を期限までに提出しなかったことから、会社と代表取締役が労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されています。

【事例③】動力プレス機に挟まれ4指切断

2017年10月、長野県の金属加工業者にて、労働者が4本の指を切断する労災事故が起きました。
該当の労働者は、アルミニウム板材の加工のためプレス機を使用している最中に、右手を機械に挟まれたとみられます。
この件では、プレス機の利用に対する危険防止措置が十分に取られていなかったことから、会社と代表取締役が労働安全衛生法違反の容疑で書類送検されています。

指切断事故が労災認定されるまでの流れ

業務中に指を切断するような事故が起こった場合、被災した労働者は労災保険から補償を受けることができます。ただし、これには労基署による労災認定が必要です。

ここでは、事故発生から労災認定までの流れを確認していきましょう。

事故発生|病院を受診する

労災事故に遭ったら、まずは速やかに病院を受診し、診断・治療を受けましょう。

この時重要なのが、「どの病院を受診するか」ということ。
労災指定病院を受診した場合、被災労働者は窓口での費用負担なく、医療を受けることができます。一方で、労災指定病院以外の病院を受診した場合には、被災労働者が一旦医療費を全額(10割)立て替えることになるので注意してください。

労災の治療では、健康保険は利用できません。窓口では、健康保険証は出さず「労災によるケガである」旨を伝えるようにしましょう。

会社に事業主証明を書いてもらう

次に、労災保険の請求書類の作成に入ります。請求する給付金の請求書を用意し、項目に沿って労災事故の内容を記載しましょう。
この書類作成・提出は会社が代理で行ってくれることも多いので、自社の対応を確認しておくようにしてください。

また、この請求書には、事業主証明欄があります。そのため、自身で書類を作成する場合であっても、会社にこの欄の記入を依頼しなければなりません。
もし会社が証明欄を記入してくれないような場合には、この欄は空白にしておき、書類提出時にその旨を労基署の担当者に伝えるようにしてください。

労働基準監督署に申請

請求書類やその他の添付書類が揃ったら、自身が属する事業所を管轄する労働基準監督署に提出します。請求する給付金によって必要な添付書類には違いがあるので、よく確認しておくようにしましょう。

また、この請求・申請手続きには時効が設定されています。時効までの年数も給付金によって違いがあるのでよく確認し、なるべく早めに手続きを行うようにしてください。

審査|労災認定基準とは

労災の請求・申請手続きを受けた労働基準監督署は、労災事故についての審査に入ります。

この審査で労災の認定を受けるためには、対象の労災事故が以下の認定基準を満たしていなければなりません。

  • 業務遂行性が認められること
  • 業務起因性が認められること

業務遂行性とは「労働関係を結んでいる事業主の支配下における事故であること」、業務起因性とは「事故の発生と業務に一定の因果関係が認められること」を指します。
労働基準監督署の審査でこれらの基準を満たしていると認められた事故については、労災は認定され、給付金の支給が行われます。

労災で指切断した場合の補償内容

労災事故で手指を切断することになった場合、労災保険から受けられる可能性がある補償には、次のようなものがあります。

【療養補償給付】 

労災事故による傷病の療養にかかる費用(または現物給付)を補償する給付金 

治療費、薬剤費、手術費、入院費、通院費などが対象 


【休業補償給付】 

労災事故による傷病による休業時に支給される給付金
 

【傷病補償年金】 

労災事故による傷病が、療養を開始してから1年6ヶ月経過しても「治ゆ」せず、その症状が既定の傷病等級(第1級〜3級)に該当する場合に支払われる給付金(一時金と年金) 

指の切断については、「両手の手指全部の喪失」の場合、傷病等級第3級として、傷病補償年金の対象となる 

【障害補償給付】 

労災事故による傷病の「治ゆ」した時に身体に一定の障害が残り、その症状が既定の障害等級(第1級〜14級)に該当する場合に支払われる給付金(一時金か年金) 

指の切断については、第3級〜14級に該当する可能性がある

傷病補償年金や障害補償給付は、等級によって給付金額が変わります。そのため、労基署による等級認定が重要なポイントとなります。

労災による指切断で認定される後遺障害等級

前述したように、労災による指の切断は、障害補償給付の補償対象となる可能性があります。この時該当し得る障害等級と後遺障害の内容、またその補償額は次のとおりです。

障害等級 後遺障害の内容 障害補償等給付と障害特別年金・一時金の金額
3級

 「労災の3級等級とは?

両手の手指の全部を失ったもの 給付基礎日額の245日分+

算定基礎日額の245日分(年金)

4級

 「労災の4級等級とは?

両手の手指の全部の用を廃したもの 給付基礎日額の213日分+

算定基礎日額の213日分(年金)

6級

 労災の6級等級とは?

一手の5の手指または母指含む4の手指を失ったもの 給付基礎日額の156日分+

算定基礎日額の156日分(年金)

7級

 労災の7級等級とは?

一手の母指含む3の手指または母指以外の4の手指を失ったもの

一手の5の手指または母指含む4の手指の用を廃したもの

給付基礎日額の131日分+

算定基礎日額の131日分(年金)

8級

 「労災の8級等級とは?

一手の母指含む2の手指または母指以外の3の手指を失ったもの

一手の母指含む3の手指または母指以外の4の手指の用を廃したもの

給付基礎日額の503日分+

算定基礎日額の503日分(一時金)

9級

 「労災の9級等級とは?

一手の母指または母指以外の2の手指を失ったもの

一手の母指含む2の手指または母指以外の3の手指の用を廃したもの

給付基礎日額の391日分+

算定基礎日額の391日分(一時金)

10級

 労災の10級等級とは?

一手の母指または母指以外の2の手指の用を廃したもの 給付基礎日額の302日分+

算定基礎日額の302日分(一時金)

11級

 労災の11級等級とは?

一手の示指、中指または環指を失ったもの 給付基礎日額の223日分+

算定基礎日額の223日分(一時金)

12級 

 「労災の12級等級とは?

一手の小指を失ったもの

一手の示指、中指または環指の用を廃したもの

給付基礎日額の156日分+

算定基礎日額の156日分(一時金)

13級 

 「労災の13級等級とは?

一手の小指の用を廃したもの

一手の母指の指骨の一部を失ったもの

給付基礎日額の101日分+

算定基礎日額の101日分(一時金)

14級

 労災の14級等級とは?

一手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 給付基礎日額の56日分+

算定基礎日額の56日分(一時金)

会社への損害賠償請求について

労災事故の発生について、会社に安全配慮義務違反や使用者責任をはじめとした法的な過失がある場合、被災した労働者は会社に対し、損害賠償を請求できる可能性があります。
その方法としては、次の3つが考えられます。

  • 会社に損害賠償の交渉をする
  • 労働審判を申し立てる
  • 訴訟を行う

まずは、会社に対し、損害賠償の交渉を行います。この交渉で納得いく賠償を引き出せない場合に行うのが、労働審判や訴訟の提起。これらの手続きでは、司法による強制力のある判断を仰ぐことが可能です。

ただし、労働審判や訴訟を行うとなると、かかる手間や時間は増え、被災した労働者の負担はどうしても重くなってしまいます。これを避けるためには、まずは交渉を成立させ示談を目指すべきでしょう。

労災隠し・損害賠償請求についてはまず弁護士にご相談ください

労災事故について会社に損害賠償請求を行う場合には、まず弁護士にご相談ください
弁護士は、豊富な知識と経験により、損害賠償請求がより有利に進むようサポートを行います。弁護士の交渉力を以てすれば、会社との交渉をうまく進め、問題を早期に解決することも可能でしょう。

また、会社から労災隠しの被害にあったり労災請求により不当な扱いを受けたりした場合も、弁護士への相談をご検討ください。法律をもとに会社に対し然るべき対応を求めることで、状況を改善し、受けた損害の補償を受けられる可能性があります。
弁護士への依頼はハードルが高いと思われる方も、まずは弁護士事務所の無料相談を利用すると良いでしょう。